子供はワクチンを打つべき? 経口薬の注意点は? 医師が徹底解説

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3回目接種は必要?

 世界各国でオミクロン株が猛威を振るっている一方、重症化率は低いとの報告もある。こうした状況を踏まえ、ワクチンや経口薬について専門家の解説を聞いてみよう。

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 オミクロン株の性質や、感染をめぐる状況を踏まえ、ワクチンや経口薬について考えたい。

 Q.3回目のブースター接種はそれでも必要か?

 まず、オミクロン株に対するワクチンの効果を、東京歯科大学市川総合病院の寺嶋毅教授にに示してもらう。

「ワクチン全体で入院予防効果は、2回目接種後6カ月以内で72%、6カ月経過すると52%、3回目ブースター接種後に88%。感染予防効果はファイザーの場合、2回目接種後3カ月以上経過すると10~20%、3回目ブースター接種後70~80%。モデルナは同程度か、ファイザーより少し高いくらいでしょう」

 この数字を前提に、「高齢者、持病もち」は、今回話を聞いた医師や専門家のだれもが、「自分を守るために」3回目を接種すべきだと言う。では、それ以外の人たちはどうすべきか。

「65歳未満で重症化リスクがない人は、ワクチンを2回接種していれば、オミクロン株への感染や発症の予防効果は低くても、重症や入院の予防効果は、ある程度保たれていると思う。感染しても症状は発熱や咳などで、医療逼迫への直接の影響も少ないと思われます。ただ、感染の連鎖につながる可能性はあり、エッセンシャルワーカーに感染者が増えると、社会機能の維持に影響が出ます。3回目接種の目的は、個人のメリットより社会的メリットという要因が、より大きくなると思われます」(同)

 愛知医科大学病院循環器内科の後藤礼司医師は、

「オミクロン株の感染者が軽症で済んでいる理由ですが、変異株の特性と、ワクチンを接種した効果と、その両方である可能性があります。特に若い人は、3回目を打って感染予防し、経済をどんどん回すべきではないでしょうか」

 と加える。社会的リスクをどうとらえるかだが、「自分のため」であれば、打たないという選択肢もあるということか。

子供はワクチンを打つべきか

 Q.5~11歳への接種が承認されるが、打たせても問題ないのか?

「私は打って予防したほうがいいと思いますが、子供は軽症が多いので、接種の優先順位は低いです。それに、ごくまれに重い副反応が出るので、親が不安視する気持ちもわかります」

 と後藤医師。副反応について浜松医療センター感染症管理特別顧問の矢野邦夫医師が説明する。

「米CDC(疾病予防管理センター)によると、子供に870万回以上接種した結果、5~11歳は注射箇所の腫れなど局所的な副反応が57.5%、倦怠感や熱など全身の副反応が40.9%でした。12~15歳ではそれぞれ62.4%、63.4%なので、幼いほうが副反応は弱く、心筋炎も少なかった。打たせたい人は打たせたほうがいいと思います」

 一方、埼玉医科大学の松井政則准教授は、

「私はあまり賛成しない」

 と言って、こう説く。

「アメリカで5~11歳のワクチン接種が始まったのは、子供への感染が増えたから。デルタ株では全米600万人の子供の感染者中、5~11歳が200万人で、700人が亡くなりました。一方、ワクチンで亡くなった子供はいないので、接種に踏み切った。でも、日本は事情が違います。子供はもともと軽症で済んでいましたが、オミクロン株になって重症化リスクはさらに下がっている。感染者数の母数もアメリカとは桁が違う。日本の政府や専門家会議はアメリカに追従しがちで、今回も倣ったのだと思いますが、子供は元気なので、熱などの副反応が強く出る可能性があり、心筋炎のリスクもある。高リスクの方々の3回目接種に、ワクチンを回したほうがいいのではないでしょうか」

 とはいえ、「子供に選択肢が増えたこと」自体は、みな評価する。たとえば中学受験生は、早生まれだと1~2月の受験時に11歳なので、子供にワクチンを打たせたい人も、打たせることができなかった。そうしたジレンマは解消される。5~6歳児に小学校を受験させる親にも朗報だと受け取る人もいるだろう。だが、寺嶋教授が指摘する。

「ワクチンは2回接種するのに1カ月ほどかかり、効果が出るのはその1~2週間後。周りで流行っているから、ということで打っても遅くなります」

 流行を見越して予防措置として打つか否か。やはり親の判断が問われる。

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