女生徒9人が暴行され出産 36歳「加害教師」には“死刑か去勢”のインドネシア事情

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被害者女生徒の深刻なショック

 インドネシアは世界第4位、約2億7000万人の人口を擁する。うち87%がイスラム教徒という世界最大のイスラム大国が今、その“倫理”を巡って大きく揺れている。

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 インドネシアで最も人口が集中するジャワ島にある西ジャワ州の州都バンドン。ここでイスラム寄宿舎(プサントレンと呼ばれるイスラム教徒専用の寄宿制教育機関)を経営し、教師をしていたヘリー・ウィラワン容疑者(36)が逮捕された。立場を利用し、寄宿生活を送る14歳から20歳の女子生徒13人を性的に乱暴した容疑である。被害を受けた女子生徒のうち9人が妊娠し、宗教的に中絶が許されないことなどから出産を余儀なくされた。しかも女子生徒の1人は、2度出産したという。

 ヘリー容疑者には、犯行を隠す目的か、女子生徒が出産した赤ん坊を人身売買組織に売り渡していた疑惑も持ち上がっている。

 バンドン警察によると、ヘリー容疑者の犯行は2016年から始まっていたという。被害者の親族などからの情報提供に基づき、2021年5月から始まった内偵捜査を経て逮捕されたが、その卑劣な犯行が公になったのは昨年12月に裁判が始まってからだった。裁判開始まで事件を公にしなかったことについて警察は、「女子生徒に与えるさらなる心理的影響や社会的影響などを考慮した結果」と説明している。

“ゆるいイスラム教国家”として知られるインドネシアだが、イスラム寄宿舎で学ぶ女子生徒は、普段から頭髪を覆うヒジャブを着用し、長袖長スカートで皮膚の露出を最小限に抑える、伝統にのっとった敬虔な身なりをしている。ゆえに被害者やその家族が受けた心理的なショックは計り知れない。

化学的去勢や死刑を求める声

 現在進んでいる裁判で検察側は、ヘリー容疑者が経営していた寄宿舎の即時閉鎖と資産凍結、被害者への弁済5億ルピア(約350万円)に加え、罰金3億3100万ルピア(約230万円)の支払いを求めている。

 インドネシアにおいて強姦罪および児童保護法違反の刑罰は、最高刑が死刑となっている。「被害者感情」「宗教的倫理問題」などを背景に極刑が適当というのが世論になりつつあり、検察側も死刑を求刑する方向で検討を進めている。一方、死刑に反対する人権団体が求めているのが“去勢”である。

 実際に犯罪者の性器を切断するわけではなく、薬物で男性ホルモン「テストステロン」を低下させて性的衝動を抑制する、化学的な去勢である。諸外国にもある刑罰だが、インドネシアでは過去の事件を契機に、未成年者に対する性犯罪には化学的去勢や死刑など厳しい措置となった経緯がある。

 その事件とは、16年4月に西スマトラで起きた、学校から帰宅途中の14歳の少女が16歳から17歳の少年7人から集団で性的暴行を受け殺害された事件である。少女の遺体は裸のまま木に縛り付けられた状態で発見されるという、残忍な手口だった。この時もインドネシア国民の間で性犯罪に対し厳罰を求める世論が沸き起こり、ジョコ・ウィドド大統領が厳罰措置に踏み切ることになった。

 ヘリー容疑者への処罰についてトリ・リスマハリニ社会相は昨年12月14日、「女子学生の将来を奪った犯行は許しがたい」として化学的去勢への支持を表明している。

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