“良妻賢母”を求めて結婚も「46歳男性」の見込み違い 不倫して分かった本当の自分

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実は不倫相手もいて…

 彼にはすでに「身も心も捧げた人」がいるのだという。その言い方に違和感を覚えて彼を見ると、「実は僕自身も本当は枠からはみ出している人間だとわかったんです」ときまじめに言った。

「17歳のとき、近所の奥さんに誘惑されたんです。20歳も年上で、男にだらしないと噂されている人だった。当時は不倫なんていう言い方をしていなかったなあ。そう、間男がいると言われていましたね。僕もその“間男”のひとりにすぎなかったんだけど、その奥さんのことが好きになってしまって……。でもその奥さんには3回くらいで捨てられてしまい、彼女の友人を紹介されてつきあったりもしました。年上の女性が好きだったんです。20代後半では40代の女性と関係を持っていました。だけど結婚するにあたって、自分の欲望を封印した。というか、これからは普通の人生を生きていこうと決めたんです。相手が年上でなくてもやっていけると思っていたし」

 ところが結婚生活はうまくいかず、次男の問題もあって彼は疲弊した。ボロボロになりかけたときネットで知り合ったのは、同じく不登校の子を抱える8歳年上の女性、安佳里さんだった。

「時間をひねり出すようにして会って話しているうちに、お互いに惹かれあっていった。彼女の息子さんは、比較的早く学校に戻れたんです。だからそのあとは僕のことをすごく励ましてくれて。実は私立小学校に編入するという方法を教えてくれたのも彼女です。ただ、彼女もまた夫婦仲はうまくいっていなかった。お互いを慰めるような癒やし合うような関係になりました」

 ふたりとも長い間、配偶者とベッドをともにしていない。優しい言葉をかけられることもぬくもりを与えられることもなかった。そんな中で出会ったのだ。求め合うのは自然ななりゆきだったと尚文さんは言う。

「安佳里がいなかったら、僕は腹を据えて息子と向き合うことができなかったと思う。本来、パートナーにするべきは年上の包容力のある人だったのではないか。そう思いました」

 彼女との関係はもうじき4年を越える。この間、お互いを支え合ってきた実感があるという。安佳里さんのひとり息子はこの春、大学4年生になる。2年ほど遠回りしたが、自分の道を見つけたようだ。

「安佳里の話を聞いていると、うちもきっと大丈夫だと思えるんです。妻とはそんな話はできない。そう言ったら『うちも夫とはそんな話はできない。夫には長年つきあっている一回り年下の女がいるの』と。安佳里のような素敵な女性がいるのに若い女に走るなんてと憤ったら、『バレたら、あなたの奥さんもどうして自分がいるのに、そんな年上の女に走るのって怒ると思う』と。確かにそうですよね。こればかりは相性の問題なのか、結婚という制度の問題なのか、もし若いころに安佳里と知り合っていたら、今よりいい結婚生活が送れたのかどうか……。タラレバを言ってもしかたがないでしょと安佳里に言われたけど」

先の見えない今後

 安佳里さんの言葉は尚文さんの心にすっと入ってくるのだという。だが妻のマナミさんの言葉はいつも彼の神経を逆なでした。言い方が悪いのかタイミングが悪いのか、はたまた本当に相性が悪いのか。

「もちろん僕にもいけないことは多々あると思う。それを許し合っていくのが夫婦なんじゃないかと思うけど、マナミとはそれができなかった。あと5、6年たって子どもたちが自立していったらと思うと怖くてたまりません。どうやってマナミとふたりだけで生きていくのか。安佳里は仕事をしているので、数年のうちに離婚するつもりだと言っています。だからといって僕に離婚してほしいとは言わないからって。でもそのときには僕も独身に戻っていたい」

 離婚を視野に入れた上での結婚生活を送るのはきついと彼は言った。だが、これ以上、子どもたちを傷つけたくはない。何を考えているのかわからない彼の妻は、離婚を考えたりしているのだろうか。

「先はまったく見えませんが、柔軟に対応していくしかない。ただ、6年後に離婚する自由が僕にあるかもしれないという可能性に向かってがんばっていくつもりです」

 結婚とはいったい何なんでしょうと思わずつぶやくと、「僕もそう思います」と彼はふっと自嘲的に笑った。

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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