藤井聡太五冠挑戦の裏で“A級陥落”危機の羽生善治 今年度の勝率は3割台…敗因は?
史上最年少での五冠獲得に挑戦中の、藤井聡太竜王(19)。その陰で、レジェンド・羽生善治九段(51)には、棋士人生最大級のピンチが訪れていた。
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今月9~10日に静岡・掛川市で行われた王将戦の第1局で、挑戦者・藤井四冠は、渡辺明三冠に勝利した。
「タイトル戦に相応しい将棋でしたね」
とはその王将位を獲得したこともある中村修九段。
「最後まで大激戦でしたが、棋士の中でトップともいえる終盤力を持つ藤井さんが、最後は勝ち切った。四冠の風格も出てきましたね」
五冠に向け、幸先良いスタートを切ったわけだ。
他方、その前週の7日、東京・千駄ヶ谷で「A級順位戦」が行われた。この対局で羽生九段は敗北。これで今期の成績は2勝5敗となった。
「羽生さんには大きな負けとなってしまいました」
と消沈するのは、さるベテラン観戦記者である。
「この敗戦でA級陥落の瀬戸際に追い込まれました。残留するには次の対局に勝利するしかない」
しかも、来月行われる次戦の相手は永瀬拓矢王座だ。
「羽生さんは永瀬さんとは分が悪く、過去4勝11敗で、現在も4連敗中。厳しい対局になるでしょう」(同)
順位戦とは、名人戦の挑戦者決定リーグのこと。下からC級2組、C級1組、B級2組、B級1組、A級と五つのランクに分かれる。それぞれのリーグで成績上位者は昇級、下位の棋士は降級となり、最上位のA級で1位となれば、名人挑戦権を得るという、ピラミッド型のシステムだ。
将棋界にある8大タイトルの中でも、名人位は最も古い歴史と格式を持ち、A級に在籍するということは、トップ棋士であることの証しである。そこに連続29期も在籍してきた羽生九段が陥落するとなれば、例えるなら、イチローが打率3割を切ったのと同じような衝撃であろうか。
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