内村航平 引退会見でも語られなかった「美しい体操」の基礎を作った3年間
深い思考と見識に新たな感銘
内村航平が引退を発表し、記者会見が行われた。質疑応答を通して、内村の深い思考と見識に新たな感銘を受けた人たちも多かっただろう。私自身、内村の真摯な自問自答と果てのない実践を重ねた姿に、改めて胸を衝かれた。同時に、こうした深さで現役選手・内村航平を伝えられなかった力不足を恥ずかしく思った。【小林信也/スポーツライター】
【写真10枚】内村航平10年の軌跡 リオ五輪からの凱旋ほか「ジュエリーベストドレッサー賞」受賞や監修マンガの発売記念イベントも
スポーツ報道は、どうしても勝負の結果に情報や関心が集中し、彼らの思考の深さを脇に置いてしまいがちだと、改めて気づかされた。もっとも、選手の多くは、現役中には自己の内面をあまりさらけ出さない。企業秘密というか、心技体の核心に触れるところは明かさずに勝負したいと考える傾向が強いから、内村も引退を決意したからこそ、あれだけ率直に話してくれたのかもしれない。
私はせっかちなのか、どうしても内村の今後に思いが向かう。これから内村はどう生きるのか。何をなすのか。
「演技者の道」への思い
記者会見の中で、内村はこう語った。
「競技者ではなく、演技者としてやっていくのもいいんじゃないかなっていうか。(中略)身体が動くまでは動かし続けたいなっていう気持ちがあるので。でももう試合に出ることはちょっと厳しいなと思ったので、こういう決断をしました」
「その3月のイベントといいますか、引退試合、演技会、エキシビションみたいな形になるので、それは終わりでもあるし、始まりでもあると思うので、演技を見せれる場っていうのを今後つくってもいいですし。(中略)リラックスした状態で見せる演技っていうのも、なんかこういつもとはひと味違って、すごみとかが見えるのかなっていうのも思ったりするので。そういうこともやっていきたいんですけど、僕としては、自分の身体が動くまでは、体操を研究したいっていう気持ちが強くて」
現役引退イコール指導者への道。最近ならタレントへの道という選択肢が浮かぶが、内村はいずれでもなく、「演技者の道」への思いを曖昧にだが語った。
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