Nスペ「証言ドキュメント 永田町・権力の興亡」 仕掛け人は安倍元首相にインタビューしていた女性記者

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麻生さんの好き嫌いが露骨に出ていた

 このデスクが続ける。

「コロナ禍で菅政権の支持率が下げ止まらない中、菅首相で総選挙は戦えないのではないかという党内の声が高まっていった。首相のお膝元の横浜市長選で、菅さんが肩入れした候補が敗れる前後から実力者がうごめき始めた。菅さんが総裁選の前に解散に打って出るのではないかと報じられたが、それは事実ではない。菅さんがコロナ禍でワクチン接種に全力を注いだ結果、今の岸田政権の安定がある……そんな内容をなぞる証言集でしたね。僕らはこうやって権力ゲームをやってるんですよっていう示威行為に近く、これじゃ政治は変わらないよなぁと思った人も少なくないとは感じました」

 その中で興味深かった点についてあげてもらうと、「麻生さんの好き嫌いが露骨に出ていたところ」と話す。

 例えば横浜市長選前の7月29日に麻生、安倍の両氏が会談した時の中身について、麻生氏が《「菅でこのまま行くんだったら早めに選挙を」ということは申し上げましたし、その時は全国を回れる元気の良い幹事長で、早めにやった方が良いという話はいろいろしたような記憶はありますね》と語っていることだという。

 いわゆる「二階切り」だが、実際、岸田氏は総裁選への立候補を表明する際、党役員の任期制限を打ち出したし、菅氏も二階氏に交代を打診している。

安倍さんをグリップしていることのアピール

 デスクの言う「麻生さんの好き嫌い」については、総裁選でも露骨に出ていた。自派閥の「大事なタマ」という河野前ワクチン担当相が、小泉進次郎前環境相や石破元幹事長と「小石河連合」を結成したことについて、麻生氏はこう語っている。

《よく分かっておられないなと思いましたね。やっぱり政局が分かってる人が秘書官なりにいれば、その部屋に入って行こうとしたら、後ろから止めるでしょうね。「石破の部屋には行っちゃいかんですよ」と言って、うちの秘書だったら止めると思いますね。だけど誰もついて行ってなかったのか、どうして行かれたんだか知りませんけど。しかも中で20~30分しゃべっている。石破さんが付いたら増える票もあるでしょうけど、減る票もあるという、そちらの読みができないと、やっぱり選挙っていうのは難しいんだと思いますけどね》

 最後に、現時点でのオールスターを集めて番組を構成できたことについて、NHK幹部に聞くと、

「安倍さんに最も食い込み、スクープを連発してきた岩田明子記者はかなり前のめりになって精力的に取材していましたね。去年の人事で政治部は菅シフトを敷き、菅さんに全く食い込めていなかった岩田記者は長年所属した政治部を離れることになったものの、菅さんが退陣し、岸田さんとはかなり近いこともあって岩田記者が復権してきました。今回、安倍さんへのインタビューを岩田記者が務めていたことは、安倍さんをグリップしていることのアピールだと受け止められています」

 永田町だけではなく局内の政局も絡み、出演者のみならず作り手側にもメリットがあったということになるだろうか。

デイリー新潮編集部

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