岸田首相を待ち受ける3つの壁 参院選後に揉めそうな党役員人事の肝
2022年は、岸田文雄首相を3つの壁が待ち構えている。最大の試練が夏の参院選であることは間違いないが、政権与党にとって「寅年」のジンクスがあることは先行きを不安視させる要因といえる。昨年10月の政権発足から100日間の「ハネムーン期間」を終えて内閣支持率も上向く中、首相はジンクスを破ることはできるのか―。
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「自民党総裁選、第1次内閣の組閣、総選挙、第2次内閣の組閣、経済対策のとりまとめ、補正予算。息をつく間もなく駆け抜けてきた」。岸田首相は就任100日目を迎えた1月11日、いつも通り淡々と自らの政権運営を振り返った。
昨年秋以降、新型コロナウイルスの感染者数はワクチン接種が順調に進んだことが奏功して低水準を維持。社会経済活動が回り出し、久しぶりに年末年始の日本列島には安心感が戻った。これと比例するように岸田内閣の支持率は上昇し、NHKの世論調査(1月8~10日)では「支持する」が前月より7ポイント増加し、政権発足後最高となる57%を記録。逆に「不支持」は6ポイント減の20%で過去最低となった。
全国紙政治部記者が語る。
「岸田政権がこれといって何かをしたわけではありませんが、菅義偉前政権でコロナ感染者が急増して医療崩壊が叫ばれていただけに『それと比べればマシ』というイメージを国民が持っているのかもしれません。ただ、すでにオミクロン株による感染急拡大が始まっており、これからが岸田政権の正念場になるでしょう」
首相は「新型コロナ対応は一瞬たりとも気を抜くことができない政権の最重要課題として取り組んできた」とも語り、自衛隊によるワクチンの大規模接種会場を再び設置することや一般の人にも3回目接種の前倒しを進める意向を表明した。説明力不足と批判され、支持率が急落した菅前政権の二の舞だけは避けたいとの思いが透けて見える。
ただ、早期の追加接種を求めてきた現場からは「岸田政権のワクチン確保が後手に回り、2回目接種から『原則8カ月以上の間隔をあける』ことが追加接種の方針とされたことなどによって混乱が生じた」(東京都内の保健所関係者)との不満は漏れる。コロナ感染者数の急増が支持率低下に結びつく最近の傾向を見れば、岸田政権が「安全」とは言い難い。
そうした中、1つ目の壁である夏の参院選が半年後に迫る。冒頭で触れたが、最近の「寅年」は政権与党に負の衝撃を与えてきた。直近の2010年は、民主党政権で2人目の宰相となった菅直人政権が誕生した。だが、直後の参院選で民主党は敗北。公示前より13議席増となった自民党が2年後に政権奪還を果たすことにつながった。
その前の「寅年」である1998年の参院選は、行財政改革を進めた自民党の橋本龍太郎首相が事前予測を大きく下回る敗北を喫した。大敗の責任から退陣を余儀なくされ、民主党や共産党の議席増を許している。
1986年に中曽根康弘首相が断行した衆参同日選で自民党が圧勝した例はあるが、昨年10月に総選挙を実施したばかりのコロナ禍で「同日選」という奇手を岸田首相が描けば、かえって逆風を招くとの見方は強い。政権の求心力増幅のためにも政治決戦は真正面から乗り越えなければならならず、決して油断できない代物だ。
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