M&A仲介大手が業界団体を設立…「社会のためにやっている」は綺麗事と言われるワケ
「イメージ戦略に乗るのも……」
「自分たちは社会貢献をしているのだと世間に認知させたいのでしょう。『M&A仲介=利益相反』という悪いイメージを払拭しようと躍起になっている印象です」
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今年に入って本格的に動き出した一般社団法人「M&A仲介協会」について冷ややかに語るのは、ある地方銀行の幹部である。同協会が設立されたのは昨年10月のこと。本部を構え、同業者や地方の金融機関に加盟を呼びかけはじめた。先日、この地銀にも誘いの連絡があったという。「うちも日本M&Aセンターさんとは付き合いがあるから加盟はしますよ」と言いつつ、「行内では、彼らのイメージ戦略に乗るのもどうなのかという話になった」という。
協会を立ち上げたのは東京に本社を構える日本M&Aセンター(三宅卓社長)、M&Aキャピタルパートナーズ(中村悟社長)、ストライク(荒井邦彦社長)の3社と、大阪のオンデック(久保良介社長)、名古屋の名南M&A(篠田康人社長)のM&A仲介大手5社だ。代表理事にはM&A仲介ビジネスの草分けで業界トップの日本M&Aセンター三宅社長が就いた。
5社はいずれもM&Aコンサル会社だが、大手企業の事業拡大・再編のM&Aではなく、後継者が決まっていない中小零細企業の事業承継型M&Aをターゲットにしている。
「社会のためにやっている」と強調
「中堅・中小企業の60万社が黒字廃業予備軍にあるのです」
協会の設立会見で、三宅代表理事は今が「危機的な状況」であると力説した。協会関係者が補足する。
「コロナは中小零細企業の後継者問題を一気に加速化させました。2025年には経営者の年齢が75歳を超える企業数が245万社になると試算されています。深刻なのは、その中の127万社で後継者が決まっていないこと。さらに、そのうちの60万社が黒字です。社会に必要とされている会社が、このままでは消えてしまう。三宅が『社会のためにやっている』と強調するのは、そういう意味なのです」
全国の中小零細企業は、今、たしかに深刻な後継者問題を抱えている。だが「だからといってM&A仲介企業が正義をふりかざすのはどうかしていますよ」と、先の地銀幹部が語る。
「後継者問題を解決する手段はM&Aだけではありません。若手に社長を譲るか、同族企業であることを守りたいなら子や親族に譲ればいい。継げる人が見つからなければ廃業という選択肢もある。さまざまな手段がある中の一つが第三者に買収してもらうM&Aです。その場合でも仲介ではなくFAでやればいい話。仲介でなければならない理由はありません」
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