脱炭素にはつながらない嘘だらけのEV推進政策――岡崎五朗(日本自動車ジャーナリスト協会理事)【佐藤優の頂上対決】

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EVはエコではない

岡崎 そもそもEVがほんとうにエコなのかといえば、そうは言い切れません。2030年までにエンジン車を廃止すると言っているボルボが、ガソリン車とEVを比較したデータを出しています。EVが何キロ走れば電源も含めたCO2排出量がガソリン車より少なくなるかを見ると、すべて再生可能エネルギーだった場合は4万9千キロ、当時のEU28カ国の電源構成だと7万7千キロ、世界平均の電源構成だと11万キロ走らないと、EVが優位に立たないんです。

佐藤 ボルボのデータなら、EV推進側の数字ということですね。

岡崎 はい。でも日本のハイブリッド車は非常に燃費がいいですから、おそらくEVが20万キロくらい走らないとクロスポイント(交点)が来ない。でも日本の場合、車はだいたい13万キロも走れば廃車にします。だからその前に買い換えることになる。フォルクスワーゲンも、ディーゼル車とEVを比較していますが、このクロスポイントも12万キロくらいです。

佐藤 それならEVに替える意味がない。

岡崎 電源の問題もあります。EVのためには、充電インフラの整備が必要です。政府は2030年までに急速充電器3万台を設置する方針ですが、できるんでしょうか? またトヨタ自動車の豊田章男社長は、日本の車がすべてEVになると、原子力発電所が10基必要になると言っています。

佐藤 大量の電力が要る。

岡崎 充電も、自宅が一軒家なら簡単です。夜に充電を始めれば朝には終わる。でも日本の45%は集合住宅で、東京23区だと8割近くになります。充電には大量の電気を使いますから、マンションの駐車場の各スペースに充電器を置くのは現実的ではありません。すると数カ所の充電器を順番で使うことになる。

佐藤 使い勝手が悪いですね。

岡崎 しかも急速充電を繰り返すと、電池の劣化は早まります。

佐藤 それにリチウムイオン電池は危険ですよ。燃え出したら止まらない。

岡崎 もちろんガソリン車でも火災は起きますが、消すことはできる。でもEVのバッテリーは、一度燃え始めたら容易には消せません。自ら酸素を生み出しながら燃えますから。もしタワーマンションの地下駐車場で大きなEV車が燃えたら、大惨事になりかねません。実際、ドイツのバイエルン州には、地下駐車場にEVを停めてはいけないという条例を作った市さえあります。

佐藤 大きめのリチウムイオンバッテリーは、飛行機の預け荷物にできないですからね。

岡崎 いまは、EVを普及させろ、そのためにはもっと安くしろ、中国製バッテリーが安いならどんどん積め、という流れになっています。でもあちこちで中国製バッテリーの火災が起きているんです。またアメリカのGMはシボレーなどに韓国LG化学製のバッテリーを載せていますが、発火事故が相次ぎリコールしています。それも約20億ドルの大リコールです。

佐藤 日本のバッテリーはどうなのですか。

岡崎 技術的には非常にレベルが高く、日産自動車のEV「リーフ」は世界で累計50万台が走っていますが、一度も発火事故を起こしていません。ただし、値段も高いんです。

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