「デジタルの牢獄」と化したウイグルの恐ろしい実態…収容所送りにされた少女「メイセム」の証言

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「すべての市民の義務である」

 メイセムは、再教育センター行きの車の後部座席に乗り込むよう命じられた。1ヵ月分の服を取りに家に戻る機会は与えられなかった。

 1時間ほどたつと、目的の建物が視界に入ってきた。メイセムは、口から心臓が飛びだしそうなほどの緊張に襲われた。

「銃をもった迷彩服の軍人がいました。特殊部隊の黒い制服を着た警察官もいた。たくさんの人が、アサルト・ライフルや巨大な棒をもっていました」

 のちに彼女はその棒が、スパイク付きの電気ショック警棒だと知ることになる。

「車を降りました。眼のまえにあったのは高校の建物でしたが、明らかに改装されて新しい施設に変わっていました。警察官たちがわたしを待っていました。金属探知機で体をチェックされたあと、ふたつの黒い鉄扉の奥へと連れていかれました」

 メイセムは扉の上の看板の文字を読んだ─―「わが国家の防衛は、すべての市民の義務である」

 戸口を抜けると、体のうしろで扉が急にバタンと閉まった。

 廊下の突き当たりにまた扉があった。突如として扉が開き、警察官が飛びだしてきた。

「入りなさい」と彼は命じた。

 扉の奥には、受付係がひとりいる不気味なロビーがあった。部屋の四隅には監視カメラが設置されている。

「どうして地区当局はわたしをここに送り込んだんですか?」とメイセムは訊いた。

「何をしなくちゃいけないんですか?」

「質問をしないでください。座って待っていてください」と受付係はぴしゃりと言った。

「拘留センターに連れていけ」

 警察官のひとりが静かにしろと叫んだ。

「この部屋には問題がある」と彼はまわりの人々に向かって説明した。

「この場所はずいぶんと汚れている。掃除しなくてはいけない。誰か、掃除をしてくれる人は?」

「おまえ!」と警察官のひとりが言い、50人ほどの人々のなかからメイセムを引っぱりだした。

「どうやら、おまえがここでいちばん年下のようだ。おまえは窓を拭け」

「それが新たな問題のはじまりでした」と、メイセムは当時の様子について振り返った。

「わたしはいちばん年下だったので、追加の仕事を押しつけられたんです。『政治について勉強する、と言われてわたしたちはここに連れてこられました。窓拭きをするなんて聞いていません』とわたしは抗議しました」

 看守たちは苦い顔をした。「おまえはセンター長と面談だ」と看守のひとりがメイセムに言った。

 メイセムは、すぐ近くにある再教育センター長の部屋に連れていかれた。センター長はぶっきらぼうに尋ねた。

「地位の高い親戚は?」

「きみは窓を掃除しなさい」とセンター長は無表情で言った。

「われわれは、きみを助けようとしているだけだ」

 メイセムは拒否した。するとセンター長は机から書類の束を引っぱりだし、それから誰かに電話をかけた。

「若い娘がいてな、窓を拭きたくないというんだ。なので、そちらでしばらく教育してくれないだろうか?」

 看守に導かれ、メイセムは廊下を抜けて外に出た。部屋を出るとき、ほかの被収容者たちが職員に訴えかけた。

「大目に見てやってくださいよ」とひとりの女性は言った。

「まだ若い女の子なんだから」

 建物の外にパトカーがやってきた。

「拘留センターに連れていけ」とセンター長は運転手に指示した。“拘留”という言葉がはるかに大きな意味をもつことなど、そのときのメイセムは知る由もなかった。

「そっちのほうが、彼女に合っているはずだ」

 メイセムを乗せた車はすぐに、ふたつ目の収容所に着いた。看守たちが「拘留センター」と呼ぶその施設は、大きな鉄扉がついた大規模な建物で、さきほどよりも多くの特殊部隊員がまわりを警備していた。

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