「デジタル化」と「DX」はどう違う? 陥りやすい勘違いを専門家が解説

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デジタル技術だけでなくデータの活用が必須

 日本では経済産業省が18年に発表した「DXレポート」によって、広く知られるようになったと思います。しかし、そこでは「古い企業の基幹システムを放置していると、経済の停滞を招く」点が強調されていて、負の遺産になるシステムの更新がDXだと受け取られていました。ここでは翌年の19年に経産省が改めて発表した定義が参考になると思い、引用します。

 そこには、

「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位を確立すること」

 とあります。ぱっと読むだけではわかりづらい文章ですが、重要なのは、「データとデジタル技術を活用して」という点です。つまり、デジタル技術を導入するだけでなく、「データ」を活用しなくてはいけない。その結果として、「競争上の優位を確立すること」になる。それは、企業がDXを推進する目的と言い換えることもできます。

 現代ではスマホでさまざまなモノを買える時代になりました。ユーザー層が年を重ねるにつれ、スマホでモノを買う人は増加の一途をたどると想像されます。例えば、類似した二つの製品を売る企業Aと企業Bのケースを考えます。企業Aの製品はスマホで購入できるが、企業Bの製品はスマホで購入できない場合、企業Aはスマホ経由での売り上げが伸びていきますが、企業Bは伸びず、企業Aへの競争力を失います。

デジタル化の波に対応する理由

 マスコミではいま日経新聞が電子版を発行しています。ユーザー数が増えているとされ、スマホのアプリで読むことができます。しかし、他の新聞社がその流れに対応できなければ、社のシェアは落ちていくことになります。

 また、ある企業がそれまでアナログな事業を行っていたのに、オンラインの事業を行うようになった場合、その企業の取引先がアナログのままなら、売り上げが下がってしまいます。新聞社なら販売店がそれにあたるでしょう。日経電子版のように新聞がデジタル化されると、当然ながら紙の新聞を扱う販売店は仕事がなくなってしまう。企業はデジタル化の波に対応しなくては、売り上げを落としてしまうことになるのです。

 では、実際に「DXを推進したい」企業はどのように進めればいいのでしょうか。そうした企業の多くが陥りやすいのが、以下のような状況です。

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