「デジタル化」と「DX」はどう違う? 陥りやすい勘違いを専門家が解説
「DX」と聞いて、世の経営者たちはその定義を理解したつもりになっていないだろうか。もし、かつての「IT化」「デジタル化」と混同しているのであれば、要注意である。企業人なら導入前に確認したい「DX」の基本をデータ分析の専門家に語ってもらった。
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〈岸田文雄新政権の課題は「DX(デジタルトランスフォーメーション)推進」だともいわれている。2021年9月には、菅義偉前総理の肝いりで「デジタル庁」が発足し、岸田総理は所信表明演説で「デジタル田園都市国家構想」に取り組む旨を表明した。
世間ではDX推進の声が喧(かまびす)しい。しかし、だからといって、「これからはDXだ」と声を張る経営者や管理職はその「本質」を分かった気になってはいないだろうか。
そこで、シリーズ累計50万部『統計学が最強の学問である』(ダイヤモンド社)の著者として知られる、統計家で株式会社データビークル取締役副社長の西内啓氏(41)に「DXの本質」を聞いた。〉
まず、DXとは何か、という「定義」を整理すると、話が分かりやすくなると思います。いまはいろんな方がDXについてさまざまな表現をされているので、混乱してしまうビジネスパーソンも多いでしょう。
DXが注目された背景
まず、DXを最初に提唱したのはスウェーデン・ウメオ大学に在籍し情報技術などを専門とするエリック・ストルターマン教授です。04年に発表した自身の論文「Information Technology and the Good Life(情報技術とよい生活)」でDXという考え方について言及しています。ただし、彼は研究者ですから、その概念はいまの「DX」とはやや印象が異なります。というのも、彼は大要、「デジタル技術によってもたらされる人々の変化をそのまま受容するのではなく、相対的に見なくてはいけない」と書いています。つまり、「企業がDXを進めないといけない」とはどこにも書いていないのです。
しかし、そうした「デジタル技術による変化は大事だよね」というストルターマンの考えは2000年代後半から10年代にかけて、形を変えながらヨーロッパに広まっていきました。それは、対アメリカ、特にグーグルやアマゾンなど「GAFA」と呼ばれる企業の台頭が背景にあったと思います。アメリカの会社がヨーロッパに進出する中で、既存のヨーロッパの会社は必然的にデジタル化を迫られることになった。そこで、「政府の政策」あるいは「企業の施策」としての「DX」が注目されるようになったのです。
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