大谷MVP受賞の背景に迫る 下半身のフィジカル強化、バットの素材変更がポイント(小林信也)
一番はフィジカル
2021年の開幕を大谷は悠々と迎えたわけではない。何しろ前年の成績が芳しくなかった。打者・大谷は出場44試合で打率.190、ホームラン7本、24打点。大谷が重視するOPS(出塁率+長打率)も.657だった。1年目.925、2年目.848に比べて大幅に落ちた。
投手としては7月、693日ぶりに登板した。打者6人に被安打3、与四球3で5失点。一死も取れずKOされた。2度目は初回こそ三者凡退に抑えたが、2回に5四球を与えて降板。以後、登板の機会はなかった。
「ケガも続いていましたし、去年もあまりいいシーズンだとは言えなかったので、それほど多くチャンスをもらえる立場ではないなってのはありました」
投打とも、危機感と背中合わせの開幕だったのだ。
21年に向けて大谷が取り組んだのは何より「フィジカル」だった。「今シーズン、技術的に向上した点、改善した点は?」と聞かれ、
「一番はフィジカルがしっかりしていたところですかね。そこがやっぱり技術に一番結びつくところなので、基本的にはしっかりしたフィジカルがあることによってできる動きが増えてくる」
そう答えている。20年のキャンプ時、盛り上がった上半身ばかりに注目が集まると、「核心はそこじゃない」とばかり、大谷自らインスタグラムに約225キロものバーベルをデッドリフトで上げる動画を公開した。両膝を曲げた姿勢で足下のバーベルを両手で握り、膝を伸ばしきるまでバーベルを持ち上げる。一般にデッドリフトは、全身を一度に鍛えることができる、脊柱起立筋を中心に背中やお尻、ハムストリング(太腿の裏側)を鍛えるとされている。打撃でも投球でも一瞬にして全身のパワーを発揮する「瞬発力」強化を目的に取り組んだのではないか。
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