宇良を襲った悲劇 相撲協会は相次ぐ事故をなぜ放置するのか

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歴史的な見解はあるのか

 わんぱく相撲の全国大会では、主催する日本青年会議所の若者たちが土俵下を数名で囲み、落ちた場合にサポートしているという。

 この危険を改善できるのは、日本相撲協会しかない。

 地方巡業では、プロもアマチュア・サイズの土俵を使う場合が珍しくない。その場合に何か不都合はあるのか、むしろケガが増えるようなデータや、観戦の醍醐味が削がれる現実があるのだろうか。

 あるいはもし、「この狭さだからむしろ安全なのだ」という歴史的な見識があるなら、教えてもらいたい。相撲部屋に取材に行くと、土俵の周りが狭く、すぐ壁が近い光景にいつも驚かされる。大きな力士が壁にぶつかってケガをしないのかと。ところが、壁が近い方がケガをしにくいという長年の知恵と経験があって、あえて壁との距離を近くしているのだと聞かされる。土俵の周りが狭いのにも、同様の安全理論があるのだろうか。

 これだけの事故やケガが実際に起きているのに、議論すら起こらないことに疑問を感じる。先に紹介した友風は、4度の手術と懸命のリハビリの間に序二段まで落ちたが、強い意志で2021年春場所に復帰した。再起して6場所目となる今場所は「幕下15枚目で白星発進をした」とニュースが伝えている。友風の不屈の闘志と努力で「希望」を感じる状況になっているが、これを美談のように語るだけでよいはずがない。

小林信也(こばやし・のぶや)
1956年新潟県長岡市生まれ。高校まで野球部で投手。慶應大学法学部卒。大学ではフリスビーに熱中し、日本代表として世界選手権出場。ディスクゴルフ日本選手権優勝。「ナンバー」編集部等を経て独立。『高校野球が危ない!』『長嶋茂雄 永遠伝説』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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