「自衛隊の名称を国防軍とするべき」 前統幕長、元陸幕長が語る憲法改正
日本は「ゲリラ部隊」に対応できない
とりわけ冨澤氏が懸念するのは、「テロ・ゲリラ」による奇襲だ。著書『軍事のリアル』(新潮新書)では、
〈「ゲリラ(遊撃隊)」は1人2人ではなく、少なくとも5、6人以上の部隊でもって機関銃、ロケット砲のような武器を使う〉
としながら、こう指摘している。
〈この程度のことで「防衛出動」が下令されることはない。するとまず警察が対応し、その警察がもてあました時には自衛隊が治安出動で出ることになる。しかし、治安出動下の自衛隊は警察と同じ警察官職務執行法に基づく権限しか与えられていないので、警察と同様にこの「ゲリラ」をもてあますことになる〉
米軍が力を貸すこともなく、つまりは「打つ手なし」の状態になるといい、
〈1996年に韓国の江陵(カンヌン)というところに北朝鮮特殊部隊員26人が上陸した時、49日間延べ150万人を投入して漸くこれを駆逐したという記録がある。そんなゲリラが日本国内で数チームも出現したら、街のお巡りさんを含む全国29万の警察と14万の陸上自衛隊では如何ともしがたい。特に、全国五十数カ所にある原子力発電所の幾つかが同時にゲリラ部隊に襲われたらどうするのか。現職自衛隊員たちは「それは警察の任務で我々のものではありません」と言うしかないが、警察は「十分に対応できます」と言えるのだろうか〉
敵地攻撃の難しさ
ちなみに、北朝鮮については同氏の『逆説の軍事論』(バジリコ・2015年刊)に、以下の記述がある。
〈既に10年以上も前のことですが、東京で韓国の陸海空軍将官OBと自衛隊の将官OBが会合を持ったことがありました。そのとき、ある先輩が基調講演で「北朝鮮がミサイルで日本を威嚇するようなことになったら、我々もミサイルで北朝鮮を攻撃できるようにする」と発言したところ、韓国側の人たちが「何を言うか。あの土地は我々の国のものだ。日本に勝手な真似はさせない。そんなことをするならば、我々が日本の相手をしてやる」と、総立ちになって反発しました〉
“敵地攻撃”の難しさを物語るエピソードである。
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