思ったほど進化していない世の中 技術が進歩しても変わらない人間の性(中川淳一郎)
2022年になりましたが、世の中、思ったほど進化していませんでした。ネットはあるし、スマホも電子マネーもあるため、1990年代前半とはかなり生活様式は違いますが、人間の基本が変わっていないだけに、あまり変わっていません。そりゃあ、1970年代、ボットン便所だらけだったのに、今やウォシュレット的な便器が駅や空港にも普通にあるのは画期的ですが、我々が子供の時に見たSFの世界と比べると「日常感」がありまくり。何しろ、人はメシを食って排泄をし、恋愛をし、相変わらず高血圧や糖尿病になる。
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コントコンビ・ラーメンズの2003年の公演「ATOM」は、鉄腕アトムが2003年に生まれたことにかけたもので、その中に「アトム」というコントがあります。1973年、未来を見たいと冷凍保存された父親(片桐仁)が30年ぶりにこの世に復活して「未来」を体感するというもの。父親同様ド近眼で、メガネが必要だと思っていた息子(小林賢太郎)が裸眼なのに仰天。実はソフトコンタクトレンズを着けていたわけで、「来てるな、未来! 30年眠っていたかいがあったよ」と父はまずは喜ぶ。
折り畳み式携帯電話については、コードも本体もないことに驚きます。しかし、考えたことが自動で文字化されず、文字入力しなくてはいけないと伝えられ、「タイプライターと変わらない」と落胆。とはいっても「ここが21世紀か!」という念願の一言を言うことができて幸せそうです。そのうえで、息子の恋人は「何星人だ?」と聞き、人類の何割が火星に住んでいるかや、車が空を飛んでいるかを聞き、その答えにさらに落胆し、再び冷凍状態に戻ろうとする、というコントです。
片桐さんも小林さんも私と年齢が同じであるため、この感覚、すごくよく分かります。何しろ、鉄腕アトムもドラえもんも銀河鉄道999も熱心に読んでいたのですから。「ATOM」から19年、大きく変わったものは「スマホ登場」「大金持ちYouTuber登場」「大富豪は宇宙旅行に行ける」「メルカリでいろいろ売れる」「電気自動車増加」「マッチングアプリの隆盛」といったところでしょうか。
しかし、中国で電気自動車は爆発するし、相変わらずネットでは2003年と同様、炎上は多い。いや、写真と動画が当たり前になったため、より炎上しやすくなったといえましょう。結局人間の「儲けたい」「モテたい」「ラクしたい」「自己顕示したい」「誰かを貶めたい」という生まれもっての性分は変わることがありません。
ドラえもんは22世紀からやってきましたが、どう考えても「どこでもドア」が実現できるとは思えません。技術は当然のことながら、巨大な利権を持つ航空各社や鉄道会社が反対するに決まっています。しずかちゃんの愛犬「ペロ」が死にそうな時は「どんな病気にもきくくすり」で助けますが、昨今のコロナのワクチン・経口薬の利権を考えると、こんな薬が許されるとも思えないですし、どう考えても技術的に22世紀までには作れないでしょう。「未来」はあくまでも「現在」の延長線上に存在するもので、夢の世界ではありません。