犬猿の仲「安倍」「石破」が共に口にする「新型コロナ分類見直し」の可能性

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 2022年になった途端に急増している新型コロナウイルスの検査陽性者数。その主犯がオミクロン株だというのは衆目の一致するところだろう。

 これを受けて、このところ新型コロナの扱いが小さくなっていたワイドショーも軒並みまた「第6波」について長時間扱うようになっている。登場する「専門家」の多くは、おおむね次のような主張をしている。

「オミクロン株は弱毒とも言われているが、まだまだわからない。感染力が強いのは確かなので結果として感染者数が増えれば、医療を逼迫させる恐れはある。だから油断してはならない」

 一方で、感染症法上の分類をそろそろ見直してはどうか、と語ったのは安倍晋三元首相だ。読売新聞1月3日付朝刊に掲載されたインタビューで安倍元首相は、次のように述べている。

「今年はさらに踏み込み、新型コロナの法律上の位置付けを変更してはどうか。

 感染症法の分類では、新型コロナは暫定的に、上から2番目に危険度の高い『2類相当』です。入院治療が原則で、医療機関や保健所の負担は大きい。

 感染の仕組みが次第に解明され、昨年末には飲み薬も承認されました。オミクロン株への警戒は必要ですが、薬やワクチンで重症化を防げるならば、新型コロナを季節性インフルエンザと同じ『5類』として扱う手はあります」

 この発言に対して、長年、安倍元首相に対して厳しい論調を展開している「日刊ゲンダイ」などは早速嚙みついている。「医療崩壊の元凶」(同紙より)が何を言うのか、というわけだ。

 もっとも、この「5類」への見直しというのは、安倍元首相のかねてからの持論でもある。一昨年、首相を突然辞任する際にも見直しの方針を示唆していた。これまでは2類以上としていたが、「これまでの知見を踏まえ、今後は政令改正を含め、運用を見直します」(2020年8月28日記者会見)と述べていたのである。

 ただし、岸田政権の高支持率にも見られるように、新型コロナに関してはより厳しい政策、方針を打ち出したほうが支持率を得られるという構図があるため、なかなかこの種の意見は主流となりづらい傾向にある。

 そんな安倍元首相の方針に、昨年の段階で賛意を示していたのが石破茂元自民党幹事長だ。安倍元首相は石破氏を毛嫌いしているというのはよく伝えられている話だが、そんなことと関係なく、石破氏は「デイリー新潮」で連載中の「石破茂 異論正論」で以下のように持論を展開している。少し長くなるが、安倍元首相の援軍ともなるようなその主張を引用してみよう。(2021年6月9日掲載)

「昨年、安倍晋三前総理は、辞任する直前に新型コロナの指定感染症の分類の見直しをする方針を述べていました。現状、5段階のうち2番目に危険とされる2類相当になっているが、死亡率などから考えると5類にしていいのではないか、ということです。

 私はこの方針変更はとても意味があると考えていました。それだけでも、かなり現場の負担が軽減される、ということを選挙区の病院などから聞いていたからです。

 ところが、この見直し方針はその後、否定されてしまいました。

 指定感染症の分類は、それによって行政や病院ができることが変わるので、現状できる対応はそのままにしたいという行政側の思いは分からないでもありません。しかし、それによってやらなくてもいい措置まで要求している面があるのであれば、この新型コロナウイルスに合わせた対応を可能とすべきですし、それは特措法によって規定できたのではないかと思っています。

 感染拡大当初はともかくとして、1年も経過して、死亡率、重症化率、ある程度の治療法もわかってきたのですから、いつまでも『新型インフルエンザ等対策特別措置法』のままで適切だとは私には思えません。報道で『新型コロナ特措法』と言われるので、そういう特別な法律が作られたのだ、と思われている方も多いのではないかと思うのですが、実は何度か改正しているのは『新型インフルエンザ等対策特別措置法』なのです。

 そもそも疑問に思うのは、政策目標として感染者の数を減少させることを重視しているのか、医療崩壊を起こさず、重症者に対応できる医療を維持し、他の病気の治療にも影響を与えないようにすることを重視しているのか、がもはや明確ではなくなっていることです。

 私は、新型コロナウイルスに対して弱者である基礎疾患保有者や高齢者などを重点的な対象とし、重症者や死亡者をいかに減らすか、日本医療の抱える根本的な問題ともいえる水平的・垂直的な機動性・弾力性の欠如をどう克服するか、が解決すべき最優先の課題であると思います」

 犬猿の仲とも伝えられる大物二人がほぼ同様の主張をしており、両者が手を組んでアピールでもすれば大きな話題となるだろうが、そんな事態にはならないだろう。政府も対応を徐々に変えてはいるものの、分類見直しまでは踏み込めていない。支持率が気になる岸田首相はどう判断していくのだろうか。

デイリー新潮編集部

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