失敗の元凶は「多様性」!? 紅白、笑う大晦日…年末番組が肩透かしに終わった理由

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なんでもありの笑いにした結果、笑えない大晦日になった日テレ

 名物番組「笑ってはいけない」の後番組ということで、「笑う大晦日」のプレッシャーは相当だったことだろう。が、保険をかけすぎたという印象だ。人気芸人を何組もMCに起用し、コントありリアクション芸ありドラマありと盛りだくさん。酒を飲みながらカジュアルなトークも引き出しつつ、きっちり練られたネタも、ハプニング的なリアクションも見せたい。ここでも多様な笑いが幅を利かせすぎて、笑えるけど薄い笑いになってしまったのが視聴者離れの一因ではなかったか。

「笑ってはいけない」は、際どい線を攻めていた番組だ。スキャンダルを起こしたタレントを起用したり、清純そうな女優にブラックなセリフを言わせたりする。笑ってしまったらケツバットというのも絵柄として暴力的だ。見ていて傷つく人、不快な思いをする人は確かにいただろうが、その分圧倒的なファンもついていた。笑いどころや注目すべきポイントが明確だからだ。わかってくれる人が笑ってくれればいいという排他的な番組でもある。排他的だからこそ、ファンとの密な関係が続いた番組になり得たのだろう。「笑ってはいけない」が二郎系ラーメンだとすれば、「笑う大晦日」はファミレスのラーメンみたいな違いを感じた。

わかりやすい「えこひいき」枠 ファミレス番組たる紅白の今後はいかに

 紅白は、寿司もラーメンもステーキもお子様ランチも揃えたファミレスという立ち位置だった。なんでもあってハズレがないが、何が目玉かと聞かれるとなんとも言えない。だけど今年は裏メニューがあります、わかる人だけわかってくれれば、そんな感じ。おそらく裏テーマは「あるべきオリンピック開会式」だったはず。マツケンサンバや、幻の椎名林檎さん&MIKIKOさん案。布袋寅泰さんやMISIAさんなど、オリパラに縁の深い歌手も終盤を彩っていた。

 多様性と言いながらも、アーティストによって濃淡をつけるのも紅白の常だ。毎年Perfumeと椎名さんと星野源さんの時間はえこひいき枠だと思う。尺も長く演出も凝っている。三組とも大好きだが、他の出場者とちょっと差をつけすぎではとヒヤヒヤしてしまう。同じガラス棟でも、三山さんと星野さんの扱いの差は明らかだった。多分来年は、えこひいき枠に藤井風さんが加わる予感がする。好きだけど。好きだけどあからさますぎる扱いの差はもうええよ、と言いたい。

 とはいえ、そもそも多様性を良しとすることは多様な楽しみ方を良しとすることにもつながる。視聴率を一手に集める お化け番組も、視聴率至上主義も、いずれも無くなっていくはずだ。視聴率が最低だった紅白は、空振りならぬカラフルに、多様性を根付かせることには成功したといえるのかもしれない。

冨士海ネコ

デイリー新潮編集部

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