「暗黙のうちにルールが決まっていて、皆が従っている」って気持ち悪い――『ワンオペJOKER』宮川サトシがハライチ岩井の漫画を絶賛するワケ
陰毛の「ないない」って?
宮川:確かに、吉田さんの詩には天才的なものを感じ、今でも憧れがあります。この出来事はあまりに強烈だったのか、僕にとっては漫画家として転機になって、これ以降、漫画の展開を考えるときには、「“あるある”から“ないない”へ転じることで笑いを作り出す」ことを意識するようになりました。
岩井:どういうことですか?
宮川:『宇宙戦艦ティラミス』(以下『ティラミス』)』でも、まず「あるある」を2、3個展開したあとに、「ないない」でオチを作るようにしたんです。例えとして出すには馬鹿げていて恐縮ですが、主人公・スバルの隠毛が突然しゃべり出す回でも、隠毛が思いもよらない場所に落ちていたり挟まっていたりする「あるある」を出した後に、突然、陰毛が話しかけてくる。しかも「お前、野球どこファン?」と尋ねてくるという「ないない」でオチをつける……そんな展開にしました。「あるある」で読者を引き付けておいて、そこからドンっと突き放すことは、今でも意識的にやっています。
岩井:なるほど! 原作を考える上でめちゃめちゃ参考になります。
宮川:もっといい例えで説明できれば良かったのですが、ギャグ漫画ということでお許し下さい(笑)。
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