日大事件で注目の私大ガバナンス改革に「立民」も「国民民主」もダンマリを決め込む理由
改革派の理事長も反対
しかし、評議員の半数までは現職の理事が加わることができるため、過半数は経営側が押さえているのが実情だ。組合が評議員にこだわる意味があるのだろうか。
「大学によっては、理事長も職員上がりで、理事会も職員が実質的に支配しているところが少なからずあります。創立家出身の理事長でも、理事会を職員で固めているケースが多く、組合からすれば、職員に理解がある理事会体制を守るためにも評議員ポストを握っておくことが重要なのです」(同)
大学の経営は創立家と職員が一体となって経営権を握り、うるさい教員を抑え込むという構図になっている。ガバナンス改革で外部理事や外部評議員の発言権が強まれば、これまでの職員の特権も奪われるというわけだ。
「いくつかの大学で、企業など外部から招かれた理事長が、経営理念のない大学の体制に呆れ、改革の大ナタを振るっているケースがあるものの、たいがいワンマン化していきます。それは改革の過程で抵抗する教授たちと対立しても、現在の制度は理事長に権力が集中しているので、“問答無用”となるからです。
今後、急速に進む少子化を考えれば、教員の数を減らしたり、職員の待遇を引き下げたりすることが経営改革の柱になるはず。これに反発する職員を抑え込むために強権を握っておきたい改革派理事長も、ガバナンス改革には反対なのです。本来は、ガバナンスを強化すれば理事長の権力の正当性も高まり、改革がやりやすくなるのですが、そういう考え方ができる人は少ないですね」(同)
世界ではESGの重要性が増している
では、このままガバナンス改革は進まないのか。ガバナンス問題に詳しい大学教授が語る。
「いえいえ、今、世界ではESGの重要性が増しています。Eは環境、Sは社会、Gはガバナンスです。国の助成金だけでなく、寄付金などを集めようとする組織は、ESGが問われます。日本はまだこれからですが、他国を見ればガバナンスの不備のある組織に国が助成金を出したり、篤志家が寄付をしたりすることはあり得ません。早晩、日本の大学もガバナンスを抜本的に見直すことが求められるでしょう。
ガバナンス改革会議の出した提言は、ほんの『序の口』のようなものですが、それにすら抵抗している大学は今後、資金集めができなくなるのではないかと思います。日大に国が助成金を出すことは難しいでしょうし、卒業生でもガバナンスが再構築されたと感じるまで、寄付しないという人もいるかもしれません。ガバナンスが大学の生き残りにとって大きなカギになることは間違いないでしょう」
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