韓国大統領選候補の執拗なスキャンダル・バトルと「2位・3位連合」の可能性

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2位に躍り出た第3の候補

 尹候補は検事総長だった2019年7月、文在寅大統領の最側近である曺国(チョ・グク)元法相の家族の不正疑惑を徹底的に追及した。その意趣返しもあって、与党は大統領選終了まで尹候補のウィークポイントをついてくるはずだ。

 煎じつめれば、「過去に他人の家庭を滅茶苦茶にしたのだから、自分の家族が犯した過ちに対し責任を取るのがスジだ」というスタンスなのだろうが、金建希氏の経歴詐称は尹候補と結婚する前の話だ。詐称自体は看過できるものではないとはいえ、尹候補にはいささか気の毒な追及にも思えてくる。

 ちなみに、李候補と尹候補はSNSの発信に関しても対照的な姿勢を見せている。尹候補が自身の政治活動や生活の様子を中心に発信しているのに対し、李候補はしばしば尹候補にとってネガティブな内容を投稿している。同じ与党所属の文大統領の方がよほど紳士的に映るほどだ。

 年明けには、そんな両氏が醜いスキャンダル合戦を繰り広げている間隙を縫って、「国民の党」安哲秀(アン・チョルス)候補が尹候補を抜いて支持率2位となった。

 YTNの依頼でリアルメーターが1月3~4日に全国満18~39歳の男女1024人を対象に調査した結果は以下の通り。

1位:李在明(33.4%)
2位;安哲秀(19.1%)
3位:尹錫悦(18.4%)

20件あまりの疑惑がある「尹錫悦Xファイル」

 メディアも安候補の支持率アップを早速取り上げ、視聴者からは「安哲秀で行こう!」「尹錫悦よりまだ安哲秀」「今回は安哲秀が正解だ」というコメントが寄せられている。

 ソウル大学出身の元医師である安候補は、1991年に「V3」という韓国初となるワクチンプログラムを開発し、「韓国のビル・ゲイツ」という異名も持つ。

 2017年の大統領選挙で文在寅、洪準杓(ホン・ジュンピョ)氏に次ぐ3位で落選。2021年4月に行われたソウル市長選挙にも出馬を表明したが、「国民の力」の候補との共闘を選択して辞退した経緯がある。

 現在、韓国では「安候補で野党側を一本化すれば、李候補より支持率が高くなる」と言われている。一本化が成立したとしても2位と3位の支持率を単純に足した数字になる保証はないし、「国民が期待していた最初の尹錫悦の姿に戻る」と宣言したばかりの尹候補が一本化に応じると思えないが、政権交代の実現にはこの道をおいて他にあるまい。

 李候補と尹候補による相手をおとしめるだけの選挙活動は、互いの評価を下げ、国民の支持が離れる結果を招いた。残り2ヶ月で3候補の支持率がどのようにして動くのか、そして、大統領選までに新たなスキャンダルがリークされるのか。

 2021年6月に話題となった文書に「尹錫悦Xファイル」というものがある。そこには、本人や家族に関する疑惑が20あまり記録されている、と当時まことしやかに伝えられていた文書だ。そのわりにはまだ大したスキャンダルは出ていない、ともいえる。与党は隠し玉を温存しているのだろうか。

羽田真代(はだ・まよ)
同志社大学卒業後、日本企業にて4年間勤務。2014年に単身韓国・ソウルに渡り、日本と韓国の情勢について研究。韓国企業で勤務する傍ら、執筆活動を行っている。

デイリー新潮編集部

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