韓国大統領選候補の執拗なスキャンダル・バトルと「2位・3位連合」の可能性

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文政権で滅茶苦茶になった公正と常識をただす

 大統領選挙を2か月後に控えた韓国で、異例の事態が続いている。1月5日、韓国最大野党である「国民の力」の尹錫悦(ユン・ソクヨル)候補が、金鍾仁(キム・ジェイン)総括選挙対策委員長を事実上更迭し、“尹錫悦式選挙”を行うと宣言したのだ。執拗なスキャンダル・バトルと浮上する2位・3位連合の可能性などについて、現地在住・羽田真代氏のレポート。

 尹候補は選挙対策委員会を解体し、「文在寅(ムン・ジェイン)政権で滅茶苦茶になった公正と常識を必ずただすために政治の世界に足を踏み入れた」とし、「国民が期待していた最初の尹錫悦の姿に戻る」と誓った。

 尹候補は与党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)候補との一騎打ちで一時リードしていたが、1月6日に発表された調査によると李候補が36%、尹候補が28%と再びリードを許した。後述するが、妻である金建希(キム・ゴンヒ)氏の経歴詐称の事実が尾を引いていることに加え、今回の自陣営を巡る騒動も相まって支持率が伸び悩んだようだ。

 もっとも、対する李候補も問題には事欠かない。女優との不倫疑惑をはじめ、飲酒運転、公職選挙法違反、職権乱用、大庄洞(デジャンドン)事業に関する優遇疑惑、殺人者である甥の弁護、息子の不法賭博など、あたかも疑惑のデパートのような様相を呈している。最近では城南(ソンナム)市長在任中の2012年、兄嫁に電話で暴言を吐いた音声ファイルがインターネット上に出回り物議を醸しており、イメージは悪化するばかりだ。

公の場で経歴詐称を認めて謝罪

 李候補にまつわる疑惑の数々を見るにつけ、浮上している問題の数が少ない「尹候補の方が“まだマシ”」と捉えられなくもない。妻の経歴詐称程度ならば見逃しても、という考えもあるかとは思うが、当地ではそうなっていない。不祥事にまみれたファーストレディーでは「国のメンツに関わる」ため、大統領夫人はクリーンでなければならないのだという声はそれなりに根強いのだ。

 当の金建希氏は2021年12月26日、公の場で経歴詐称を認めて謝罪した。尹候補が大統領に就任しても「妻の役割に徹する」と公式行事参加を控えるような姿勢も見せている。

 尹候補自身、この5日前の22日に「自身が大統領に当選したとしても妻に対して“令夫人(ファーストレディ)”という言葉を使わないように」と提案。また、「令夫人を担当する青瓦台第2付属室を閉鎖する」とも語っているが、今のところ効果はあまりないようだ。

 本人が謝罪したことにより、金建希氏にまつわる疑惑は落ち着きを見せたかに思えたが、「共に民主党」は今月1日に「金建希夫人が2006年に米国のニューヨーク大学で研修を受けていた当時、韓国の大学での講義に虚偽の出講記録を作成した」という疑惑を新たに提起した。身体は米国にあるのにどうして韓国の大学での講義に出席できるのかというわけだ。騒動を鎮静化させまいと躍起になっているようにも見受けられる。

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