大阪桐蔭だけじゃない!プロ野球選手を次々と輩出するアマチームの“凄み”
現在の高校球界をリードするチームと言えば大半の人が大阪桐蔭と答えるだろう。甲子園で春夏合わせて8度の優勝もさることながら、毎年のようにプロ野球へ選手を輩出している。現在NPB球団に所属している現役選手は22人を数え、これは全国の高校でもトップの数字だ。勝ちながら選手を輩出するという意味では、かつて甲子園を席捲したPL学園と匹敵する存在と言える。【西尾典文/野球ライター】
【写真】明大野球部出身者には多くのタイトルホルダーが。昨年のドラフト上位指名を受けた選手たちもそれに続けるか
量だけでなく質も高い
しかし、高校野球ほど注目は浴びないものの、多くのプロ野球選手を輩出しているチームは他のカテゴリーにも存在している。今回はそんなチームをピックアップし、2022年のドラフトで指名の可能性がある選手も取り上げたい。
大学で最も目立つのが明治大だ。昨年のドラフトでも丸山和郁がヤクルトから2位指名を受けて12年連続のNPB選手輩出となったが、これは同一チームからの指名では史上最長記録である。
その顔ぶれを見ると、島内宏明(楽天・21年打点王)、野村祐輔(広島・12年新人王・16年最多勝、最高勝率)、高山俊(阪神・16年新人王)、柳裕也(中日・21年最優秀防御率、最多奪三振)、佐野恵太(DeNA・20年首位打者)、森下暢仁(広島・20年新人王)と多くのタイトルホルダーが揃っており、量だけでなく質の高さも見事という他ない。
毎年全国からが高校トップクラスの選手が入学してくるとはいえ、大学で大きく低迷することなく、上級生になるとしっかりドラフト候補として浮上してくるケースが目立っている。
また、島内や佐野のように大学やプロで大きく成長する選手が存在していることも事実だ。プロで指名されるためにはどの程度までレベルアップが必要かという“ものさし”が毎年チーム内にいるというのは、大きなプラスと言えるだろう。今年は高山や森下のような目玉クラスは不在だが、リードオフマンの村松開人は大学球界でトップクラスのスピードとミート力があるセカンドとして注目されており、明治大から13年連続でドラフト指名される可能性も十分にあるだろう。
「起床4時半で~、帰るのは9時~」
明治大以外も東京六大学と東都大学のいわゆる“中央球界”と呼ばれるリーグの大学が多くの選手をNPBに輩出しているが、地方リーグでは、上武大(関甲新学生野球連盟)が存在感を見せている。
00年に谷口英規監督が就任してから強化が進み、13年の全日本大学野球選手権で初優勝を果たすなど、全国大会で上位進出の常連となっている。チームの強化とともにNPB選手の輩出が増え、安達了一(オリックス)、加藤翔平(中日)、宮川哲(西武)などがチームの貴重な戦力となっている。
安達と宮川は社会人経由での1位指名だったが、昨年はブライト健太(中日)が大学から直接では初となるドラフト1位でのプロ入りを果たしている。近年は、高校時代から評判の選手が入学してくることが増えたものの、東京六大学や東都大学のチームと比べれば、無名の選手が圧倒的に多い。
そんな選手が伸びる要因は豊富な練習量と言われており、試合中にスタンドの控え部員が「デイドリーム・ビリーバー」のメロディで歌う「ずっと夢を見て~、練習してきた俺ら。起床4時半で~、帰るのは9時~」という替え歌もおなじみとなっている。
部員数は毎年200人前後の大所帯であるが、関甲新学生野球連盟は、春秋のリーグ戦とは別に独自の大会を行っており、その大会には一つの大学から複数のチームの出場が可能になっている。上武大も毎年二軍以下のチームも多く出場しており、そこでチャンスをつかむ選手も少なくない。
ブライトも4年春に初めてリーグ戦でヒットを記録した遅咲きの選手だが、そんな選手が出てくる背景に、こうした取り組みが影響していると言えそうだ。今年は、最速153キロ右腕の加藤泰靖が最注目の選手で、春の活躍次第では2年連続の1位指名も十分に期待できるだろう。
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