千葉真一を国民的スターにした「キイハンター」秘話 俳優・谷 隼人×女優・大川栄子
出演までの経緯は
――「キイハンター」の出演はどんなふうに依頼が来ましたか。
谷 栄子ちゃんは東映児童出身だっけ?
大川 東映児童演劇研修所所属でした。いわゆる“テレビっ子”で、映画は4本しか出ていません。高倉健さんの「恐喝」、夏八木勲さんの「十一人の侍」、梅宮辰夫さんの「柳ヶ瀬ブルース」、美空ひばりさんの「ひばりの母恋いギター」。その後、TBSで「キイハンター」の前に同じ枠で放送していたドラマ「平四郎危機一発」で主役の石坂浩二さんの恋人兼秘書役をやっていたんです。当時はまだ大学生でした。石坂さんは劇団四季所属で、舞台との掛け持ちで身体をこわされて、キャスト総入れ替えになったタイミングで「キイハンター」のお話をいただきました。
谷 僕は東映所属でした。緑魔子さん主演の「非行少女ヨーコ」でハイミナールでラリっている予備校生役や、「決着(おとしまえ)」ですぐに刺されて死ぬ役をやった後、「網走番外地」シリーズで尊敬する高倉健さんと出会った時期に、プロデューサーの近藤照男さんから「キイハンター」の話をもらった。「レギュラーだぞ」と。
「出演者に一人も嫌いな人がいなかった」
――お二人の初対面は?
大川 オープニングの撮影だわね。
谷 日比谷公園。
大川 監督の深作欣二さん(代表作「仁義なき戦い」等)と佐藤純彌さん(同「新幹線大爆破」等)が凝りに凝って、1週間くらいかかった。鳩が飛び立つのを待ったり、千葉さんがクルマからカッコよく飛び降りるシーンを何度も撮ったり。
谷 栄子ちゃんは、人気者だったね。
大川 現場で一番年下だったから(当時20歳)、みなさんにかわいがっていただきました。丹波さんの膝が私の指定席で、現場に入ると、いつも「栄子。おいで」と呼ばれて膝の上に座っていました。
谷 今なら完全にセクハラだよ(笑)。
大川 全員が仲よしだったでしょ。出演者に一人も嫌いな人がいない現場は、私はたぶん「キイハンター」だけだったと思う。
谷 僕もそうかもしれない。丹波さんという家長がいて、野際さんと千葉さんがお姉ちゃんとお兄ちゃんで、僕と栄子ちゃんがついていくという関係性が最初からでき上がっていたからね。丹波さんは、とにかくスケールが大きかった。現場に起きたままのパジャマ姿で現れることもあったでしょ。
大川 台詞は憶えて来ない。「今日はなにを言えばいいのかな?」と。
谷 「オレは仕事を家に持ち込まないんだ」って。現場に撮影が終わった台本を持って来て「今回の犯人は誰だい?」って(笑)。でも、一番映りがいい。
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