千葉真一を国民的スターにした「キイハンター」秘話 俳優・谷 隼人×女優・大川栄子

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実は慎重だった千葉さん

大川 銃で撃たれるシーンも迫力があったでしょ。

 銃撃戦では、弾着(火薬を破裂させ、着弾したように見せる装置)を服に仕込むんです。美術さんがスイッチを入れると着弾したようにバン!と服に穴が開く。でも、千葉さんは服にバッテリーを仕込んで自分のタイミングでスイッチを入れて演技します。だから、動きがすごくきれい。弾着の仕込みそのものも、美術さんに任せると火薬の向きが適当で、破裂した時に自分の顔に飛んでくることもある。だから、自分で必ずセッティングするなど、すごく慎重な人でした。高所からぶら下がるシーンでは、実は命綱を使っていることも多かったけれど、その隠し方も上手でした。

大川 千葉さんは面倒見のいい人だったでしょ。

 「キイハンター」のころにJAC(ジャパンアクションクラブ)をつくって、後輩の育成も始めた。志穂美悦子さん、真田広之さん、堤真一さんたちが輩出した。

大川 「俺は西部の殺し屋キッド」という回に真田さんは子役で出演しています。まだ本名の下澤廣之(当時の表記は下沢宏之)で。

ホテルにファンが押しかけて塀が崩壊

――「キイハンター」のロケは、どこへ行っても大変な人だかりだったとか。

大川 沖縄ロケをやった「太陽に帰った殺し屋」の回のときはとくにすごかった!

 沖縄が返還前でまだアメリカ統治下で、1ドル360円の時代。泊っているホテルにファンが押し寄せて、塀が崩れちゃった。ロケバスがホテルの前で動けなくて。消防車に散水してもらって、ファンが離れたタイミングでバスの中に入った。

大川 私たち、視聴率の高い番組に出演させてもらっているんだ、って実感した。

 沖縄はチャンネル数がまだ少なかったから、本土よりもはるかに多くの人が見てくれていました。

大川 メンバーの姿が窓から見えると大騒ぎになるから、ホテルの中の廊下も窓の外から見えないように這っていたくらい。

 栄子ちゃんと買い物に行ったときも大変だった。

大川 ファンに見つかって、建物の屋根伝いにホテルに帰ったね。それで、ブランド店の人たちにホテルに来てもらうことになった。

 騒ぎを収めるため、ファンの方々へ色紙にサインをした。

大川 1人5千枚くらいずつ。

 でも、丹波さんたちはすぐに飽きちゃって、あとは書いてくれ、って。

大川 私たちが書いたね。

 僕たちはメンバーでは下っ端だから。あの回ではまだゲストだった川口浩さんの分も書いた。川口さんのサインは書きやすくて助かったけど。

大川 当時はちょっと怖いファンもいた。新宿を歩いていたら、若い男の人が私の歩調に合わせて横を歩いて「キイハンター」の主題歌「非情のライセンス」を歌い続けるの。早く離れてくれないかな、と思いながら歩いていたら、歌いながらすっと去っていった。

 それはかなり怖いね。

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