新大河「鎌倉殿の13人」 スタート前に抑えておくべき見どころ 北条義時はずるくてダークな男?
三谷節はどうなるか
誤解する向きもあるようだが、三谷氏は時代考証を尊重する人。史実を捻じ曲げたりはしない。だが、喜劇調の作品を得意とするのは知られている通り。あの時代を生きた人物たちの人間性や心象風景を独自に解釈し、肩の凝らない物語に仕立ててくれるはずだ。
小栗は昨年12月17日のオンライン会見でこう語った。
「『ここの部分で、このシーンは必要なんだろうか』と思うようなところに(三谷氏は)面白い要素を入れてくることが非常に多い。急な切り替えが難しいけれど(そのほうが登場人物たちは)人間らしいと言えば、人間らしい」(小栗)
大泉はこう口にした。
「(今回は自分が真田信之役で出演した)『真田丸』よりも若干コメディ要素が強いんじゃないかと思っています」(大泉)
爆笑が期待できそうだが、歴史はあくまでシリアスに進む。最大の見どころは、弱小豪族の北条家に生まれた上、その跡取りですらなかった義時が、鎌倉幕府2代執権という最高権力者になるまでのプロセスだ。
義時は兄・宗時の戦死によって家督を相続。その後はパワーゲームを勝ち抜き、父・時政(坂東彌十郎、65)まで倒す。さらに朝廷が義時を討とうとした1221年の「承久の乱」でも勝利を収める。
あの時代の実質的なキングになった義時。その時の心境も注目点だ。自分が登り詰めるまでには多くの血が流れた。血族とも戦った。家臣も死なせた。義時は仕方がないことと割り切れていたのか、それとも苦悩していたのか。「新選組!」、「真田丸」とは異なり、三谷氏が初めて勝者の姿を浮き彫りにする大河となる。
タイトルにもある「鎌倉殿」とは鎌倉幕府の歴代将軍。もともとは頼朝の敬称だったが、やがて歴代の将軍を指す言葉として広まった。
「13人」とは「13人の合議制」のメンバーを指し、この制度が確立されたのは1199年4月。頼朝が謎の急死を遂げ、政子との長男である頼家が18歳で将軍に就いてから3カ月後のことだった。
合議制は若き将軍を助ける機関として生まれた。だが、それは表向き。真の狙いは頼家の暴走を食い止めることにあった。頼家は偉大なる父・頼朝を超えようと張り切り過ぎ、幕府にとって迷惑な存在でもあったのだ。2代目の心理は現代もあのころも変わらないらしい。
合議制のメンバー13人を抜きにして幕政は動かなくなる。メンバーは幕府誕生に貢献した有力家臣から選ばれた。顔ぶれは時政、義時、比企能員(佐藤二朗、52)、安達盛長(野添義弘、63)、和田義盛(横田栄司、50)、梶原景時(中村獅童、49)、三浦義澄(佐藤B作、72)、大江広元(栗原英雄、56)、三善康信(小林隆、62)、中原親能、二階堂行政、足立遠元、八田知家。
そのほとんどが将軍家と女系を通じた縁戚だった。例えば比企能員は娘が頼家の側室・若狭局となって、長男・一幡を産んでいる。
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