落合博満、GM就任は“唯一の失敗” 中日スカウトは「我々は反落合。うちの球団を買収して、フロントを一掃してくれませんか」

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一般の観客もいるスタンドで

「我々は反落合ですから。うちの球団を買収して、フロントを一掃してくれませんか?」

 これは落合GM時代にアマチュア野球の現場で、中日のスカウトが社会人チームの関係者と交わしていた会話である。これは一般の観客もいるスタンドで話されていたことであり、当然、筆者以外にもこの話を聞いていた人間がいたことは間違いない。

 冗談とはいえ、大勢の人間が聞こえる場でこのような会話をしているスカウトも問題だが、GMの方針に現場の人間が納得していなかったことの現れと言えるだろう。現役時代の実績から選手に対しての指示は、説得力のあるものだったかもしれないが、選手の実力や将来性を見出すスカウトに対しては同じようにいくわけではない。

 GMの方針に納得がいかないのであれば、選手を推薦する立場のスカウトの“熱”も当然低くなる。そんな中で指名された選手は自信を持ってプロの世界に飛び込めなかったという部分もあったはずだ。

 ドラフトで即戦力となる選手は少ないため、それを短期的に補うためのトレードや外国人選手だが、その面でも落合GMは有効な補強ができていたとは言えない。GMを務めていた期間は約3年間だったものの、その後のチームの低迷を見れば、やはり、その手腕に対して高く評価することはできない。それだけ監督に求められる能力とGMに求められる能力は違うということでもある。そういう意味では、監督して結果を残した落合に、安易にGM職を託した中日球団の判断も大きな誤りだったと言えるのではないか。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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