深夜ドラマ「おいハンサム!!」 主演「吉田鋼太郎」だけではない話題作と言われる理由
民放で1月から始まる新しい深夜ドラマ(午後11時以降)は計13本。そのうち最も話題作になりそうなのが、フジテレビ系で8日が初回の「おいハンサム!!」(土曜午後11時40分、制作・東海テレビ×日本映画放送)である。演技巧者の吉田鋼太郎(62)が6年ぶりに連ドラに主演する一方、原作者も演出担当者も才能の塊のような人だからだ。
吉田鋼太郎が演じる主人公は58歳のサラリーマン・伊藤源太郎。頑固な昭和オヤジで、だから社内では面倒な存在でもあった。寺内貫太郎が会社に迷い込んだようなものだと考えればいいだろう。
家に帰ると、源太郎を立ててくれる出来た妻・千鶴(MEGUMI、40)と2人暮らし。娘が3人いるものの、既に全員が独立している。
ところが一安心とはならなかった。独身の長女・由香(木南晴夏、36)は不倫体質。次女の里香(佐久間由衣、26)は高学歴男と結婚したものの、離婚寸前だった。3女・美香(武田玲奈、24)は売れそうにない漫画家志望の青年と同棲していた。娘たちは揃って男を見る目がなかった。
そこで源太郎は愛する娘たちを幸せにするために立ち上がる。もっとも、昭和オヤジの感覚で動くからトホホな展開になってばかり。ある時は娘たちの意向を完全に無視し、自分が気に入った男を紹介したものの、これが長女・由香の元カレだった。でも、娘たちを心から愛しているから憎めない。
吉田によると、この作品のコンセプトは「令和にあえて昭和のホームドラマ」(東海テレビの代表インタビュ―)。なるほど、昭和期には頑固オヤジとその家族によるホームドラマが1つのジャンルとして確立されていたが、今では絶滅寸前。新鮮な作品になりそうだ。
意外にも吉田は連ドラ主演2作目
吉田鋼太郎の連ドラ主演は中年男の純な恋心を描いたテレビ東京の「東京センチメンタル」(2016年)以来。というより、これまで連ドラの主演作はこの作品しかない。意外だが、そもそも演劇人なのでドラマの仕事に強く拘っていなかった。
吉田は上智大を中退し、劇団四季に入り、その後は劇団シェイクスピア・シアターなどに在籍した。
一方で20代半ばからは故・田村正和さん主演のTBS「子供が見てるでしょ!」(1985年)や中山美穂(51)主演の同「ママはアイドル!」(1987年)などに小さな役で出演したものの、これはアルバイトみたいなものだろう。
当時は毎年、数本の舞台に出演していたから、連ドラどころではなかった。1997年には劇団AUNを旗揚げし、ますます演劇の人になった。
今も同劇団を主宰し、「彩の国シェイクスピア・シリーズ」(さいたま市)の芸術監督を務めている。演劇人であることに変わりはない。けれどホリプロ・ブッキング・エージェンシーにマネージメントを任せるようになってから連ドラの仕事が増えた。
2014年に演劇部門の芸術選奨文科相賞を受けているほど一流の演劇人だから、どんな役柄であろうが、いとも簡単に演じてしまう。フジ「カラマーゾフの兄弟」(2013年)で血も涙もない悪魔のような父親を演じたと思ったら、その半年後にはTBS「半沢直樹」(同)で部下のことを親身になって考える理想的な上司に扮した。
テレビ朝日「おっさんずラブ」(2016年~19年)では一転、部下に恋する黒澤武蔵役に。これは超難役だった。普段は仕事が出来るシブイ中年男ながら、ピュアすぎる恋心を隠し持ち、時に乙女に変身するのだから。この役柄を大真面目に演じ、不自然さを感じさせない役者はそういないだろう。
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