ロックダウン下の「西安市」で食料不足を訴える住民たち…中国発の食糧価格高騰に要注意

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世界のトウモロコシ在庫の7割を買い占める中国

 業を煮やした中国政府は強権を発動しようとしている。昨年9月に医療目的以外で行われる妊娠中絶を禁止する方針を明らかにした。中国では1979年にいわゆる「一人っ子政策」が実施されたが、そのやり方は苛烈だった。「人口増加を抑制する」という目標達成のために中絶手術が強要されたが、「今度は『人口減少を反転させる』という目標のために『強制受精』が導入されるのではないか」との恐怖が若者の間で広がっているという。

 人口が急減した農村部でもマンションが林立し、山間部や棚田には太陽光パネルが敷き詰められた。乱開発のせいで洪水や土砂崩れが頻発したことも耕作地の減少に拍車をかけた。西安市で起きている食料不足は中国のどこで起きても不思議ではないのだ。

 改革開放直後は概ね食料を自給していたが、人手や農耕地が不足してしまったことから、大豆の輸入量は過去10年間で10倍、トウモロコシの輸入量は3年間で3倍と急拡大した。現在の中国は食料を海外に大きく依存している。

 昨年12月25日に開催された25日に北京市で開催された中央農村工作会議に出席した習近平国家主席が「2025年までに豚肉の95%を自給せよ」と演説したように、ここに来て食糧安全保障政策の優先順位が一気に高まっている。2018年に流行したアフリカ豚熱のせいで国内の大量の豚が殺処分され、中国人が愛する豚肉価格の高止まりが続いていることが関係している。

 だが長年のツケをすぐに払拭できるわけがない。コロナ禍で中国の世界に対する食料買い占めの動きは激化するばかりだ。世界の在庫に対する中国の買い占め率は、トウモロコシは約7割、コメは約6割、小麦は約5割、大豆は3割超だと言われている。

 国連食糧農業機関(FAO)が算出する昨年11月時点の食料価格指数はコロナ禍などの影響で前年同月比で約27%上昇し、2011年6月以来の高値を記録した。ロックダウンの影響で国内の食料流通が滞れば、中国はますます輸入に依存するようになり、世界の食料価格はさらに高まる可能性が高い。サプライチェーンの混乱ではなく食料価格の高騰への不満から、世界各地で政情不安が起きてしまうのではないだろうか。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮編集部

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