京王線内の殺人未遂事件で注目された鉄道車両内の安全と「貫通路」について考える

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新幹線から通勤電車まで70cmから90cmまでの間

 実際にはこのような幅を確保できている車両は多数派ではない。いま国内で見られる鉄道車両の貫通路の幅は、新幹線から通勤電車までおおむね70cmから90cmまでの間だ。

 具体的な数値を新幹線の車両で挙げると、東海道・山陽・九州新幹線を走るN700系という車両は85cm、東北・北海道新幹線を走るE5系・H5系という車両は81cmである。N700系もE5系・H5系も普通車では客室の通路の幅が57cmとさらに狭い。ただし、他の車両への避難は必然的に1列となるので、貫通路がボトルネックとなることはないだろう。

 京王電鉄の8000系のような通勤電車の貫通路の幅が狭い理由はいくつか挙げられる。一つは、貫通路に設けられた引き戸の幅が広いと開け閉めしづらいからだ。

 幅120cmの貫通路として例に挙げた東急電鉄8500系の両開きの引き戸を全部開けたいときは両手で取っ手を持ち、左右に開ける必要がある。片手がふさがっていると開けづらい。

 かつて西武鉄道の101系や701系といった通勤電車にも幅120cmの貫通路があり、こちらの表開きの引き戸は片手で開けられた。恐らく2枚の扉が連動するような仕掛けになっていたのであろう。けれども、結構重くて筆者も難儀した覚えがある。

 もう一つの理由は先頭車と連結するためだ。と言ってもこれだけでは鉄道愛好家以外わからないだろう。

 正確に言うと、先頭車のうち運転室の付いている側と連結するためだ。先頭車の前面は1枚のガラスになっていて他の車両と連結しても貫通路を構成できない車両も増えてきた。

 だが、ディーゼルカーを中心に真ん中に扉が設けてあり、貫通路を構成できるものがやはり多い。その際、120cmもの幅を開けてしまうと、運転士が運転操作を行うスペースがなくなってしまうし、見通しも悪くなる。そのため広くても70cm、おおむね60cm台がせいぜいとなってしまう。そのため幅を広く取ることができないのだ。

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