「ライター」を目指す若者に教えたい実態 編集者からの雑用…できなければ「1文字0.2円」の原稿を書くことに(中川淳一郎)

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 12月3日、仰天のニュースが登場! ITmediaビジネスONLINEの「大人1231人に聞く『なりたい職業』 YouTuberや医師を抑えた1位の職業は?」という記事です。なんと、1位が「ライター(Webライター)」(56人)で、2位「公務員」(52人)、3位「医師」(46人)と続きます。

 なりたい理由は「自分の時間配分で仕事ができ、自由な時間を増やす事ができて心も豊かになると思います」「昔から文章を書く仕事に興味があった。(才能はさておき)歳を重ねても続けられるかな? と思ったから」などがあり、調査したメディア「エラベル」は「会社という枠組みに縛られることなく、自分の好きなことを仕事にしたいと思っている人が少なくないのでは」と人気の理由を分析しています。

 この記事を教えてくれたのは、もう20年間一緒に仕事をしているライターで、私も含めた3人にメールを送ってきました。

「いつの間にかライターの地位が向上している! そして自分の職業を自慢できる時がくるとは! それにしても、信じられない世の中になってしまいましたね。びっくり!」が同氏の感想。他の2人は「手応え…ないなぁ笑」「我々の努力は実りました! 当該の人間としては『全然手応えがないんですけど』という感じですが、ここは無邪気に喜んでおきましょう」とあります。

 私もこの結果には仰天しましたが、外から見たらライターって自由で楽しい仕事に見えるようですね。というわけで、初心者ライターの実態をここで示し、デイドリームビリーバーたちの目をガツンと醒まします。

 彼らが想像するライターって楽しそうに旅行したり、おいしいものを食べた様子を報告する人々だと思うのでしょうが、ペーペーの時なんてヒドいもの。とにかく編集者からの雑用を押し付けられるだけ。

「『2021年にはやったもの』を五つのジャンルで10個ずつ紹介するので、識者15人に5ジャンル五つ以上紹介してもらっておいて。そのうえで、票数の多かった10商品のサービス提供会社に電話し、企画書渡して一言コメントと写真もらっといて」

 コレ、気が遠くなりませんか? 最低でも識者20人に電話しないと「15人」なんて確保できないし、35~50社に電話することになるんですよ! しかも識者は了承したというのに、締め切りまでにラインナップを教えてくれず、企業からは「担当者が不在」や「年末だから忙しい」と言われるほか、「ウチは広告間に合ってるんだよ!」となぜかキレられてガシャンと電話を切られてしまう。

 編集者からは「意外性がないラインナップじゃん! もう一度〇〇先生に商品聞き直せ!」と言われ、さらに商品の価格を間違えたり、「プ」と「ブ」を間違えたり、先方の担当者が「齊藤」ではなく「齋藤」だったりし、掲載後、謝罪行脚となる。

 こういう仕事はしたくないから、とクラウドソーシングで「コタツ記事(取材ナシでコピペやテレビを見て書く記事)」に手を染めると1文字0.2円、3千字で驚愕の600円!

 しかし、この悶絶の8年間ほどを乗り切ればそれなりに実力派になりラクになりますが、8年、長いんだな、コレが……。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ。ネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』等。

まんきつ
1975(昭和50)年埼玉県生まれ。日本大学藝術学部卒。ブログ「まんしゅうきつこのオリモノわんだーらんど」で注目を浴び、漫画家、イラストレーターとして活躍。著書に『アル中ワンダーランド』(扶桑社)『ハルモヤさん』(新潮社)など。

週刊新潮

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