“第二の阪神・中野拓夢”は出るか…下位指名でも即戦力として期待できる9人のルーキー
昨年のプロ野球界は、セ・リーグの新人王に輝いた栗林良吏(広島)をはじめ、牧秀悟(DeNA)や佐藤輝明(阪神)、伊藤将司(阪神)、中野拓夢(阪神)、伊藤大海(日本ハム)と5人のルーキーが新人特別賞を受賞するなど、新人の当たり年となった。中でも中野はドラフト6位という低い順位でのプロ入りながら、ショートのレギュラーをつかみ、盗塁王のタイトルを獲得するなど、期待以上の働きだった。そこで今年のルーキーも、中野のように下位指名ながら1年目から即戦力として期待できる選手について探ってみたい。なお、今回取り上げるのは4位指名以下の選手を対象とした。【野球ライター/西尾典文】
【写真】新人の当たり年となった2021年…2022年、下位指名ながら即戦力として期待できる選手たち
中軸を相手に二者連続三振
投手でまず早くから一軍戦力として期待できそうなのが、広島5位の松本竜也(Honda鈴鹿)だ。智弁学園時代からまとまりのある好投手だったが、社会人の4年間で順調にスケールアップした印象を受ける。
素晴らしかったのが、東邦ガスの補強選手として出場した都市対抗でのピッチングだ。3試合ともリリーフで合計8イニングを無失点。特に2回戦の日立製作所戦では延長10回タイブレーク、ワンアウト満塁の場面からマウンドに上がると、中軸を相手に二者連続三振でチームのサヨナラ勝ちを呼び込んだ。
ストレートのスピードは145キロ程度と驚くようなスピードがあるわけではないが、バランスの良いフォームで球持ちが長く、数字以上の勢いが感じられる。腕を振って速いボールを打者の胸元に投げ込める制球力の高さは社会人でもトップクラスであり、緩急をつけるカーブ、横に鋭く滑るカットボールも高レベルだ。
縦の変化球は少し改善の余地はあるが、走者を背負った場面でも力を発揮できるのは大きな強みである。広島のリリーフ陣は、スピードこそあるもののコントロールに不安があるタイプが多いだけに、ブルペンの一角に食い込む可能性は十分にありそうだ。
井口監督に強烈アピール
リリーフに特化した投手として面白いのが、八木彬(ロッテ5位・三菱重工West)と長谷川威展(日本ハム6位・金沢学院大)の2人だ。八木は東北福祉大では故障に苦しみ、4年時はリーグ戦で登板なしに終わったが、社会人で見事に復活。見違えるほど体格が立派になり、ストレートはコンスタントに150キロを超えるまでになった。大型のパワーピッチャーながらコントロールも安定しており、フォーク、スライダーと決め球となる変化球を2つ操ることができるのも大きな武器だ。日本選手権では水野達稀(日本ハム3位・JR四国)にサヨナラホームランを浴びたものの、都市対抗では2試合連続で三者凡退と完璧なピッチングを見せ、視察に訪れたロッテ・井口資仁監督にも強烈にアピールした。ロッテのリリーフ陣は全体的に中堅、ベテランが多く、八木は1年目から貴重な戦力として期待できるだろう。
一方の長谷川は、左のリリーフタイプだ。夏の甲子園で優勝した花咲徳栄ではベンチ外だったものの、大学進学後に急成長を遂げて、プロ入りを勝ち取った。スライダーはストレートと変わらない軌道から打者の手元で鋭く大きく変化し、空振りを奪える必殺のボールだ。ストレートも着実にスピードアップして145キロ以上をマーク。ボールの出所が見づらいフォームも大きな特徴である。宮西尚生と堀瑞輝に次ぐ左の中継ぎ要員として期待できるだろう。
投手で最後に取り上げたいのが、日本ハム8位の北山亘基(京都産業大)だ。関西の大学球界を代表する右腕で、150キロ前後のスピードと高い制球力を兼ね備えており、下級生の頃から常に主戦として投げ続けてきた経験の豊富さも光る。好投しながらも勝ち切れないことが多く、必殺の武器となる変化球も欲しいところだが、ベースとなる能力は高いだけに、意外に早く一軍の投手陣に食い込んでくることもありそうだ。
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