システム障害8回「みずほ銀行」がグダグダすぎてメガバンクから脱落する日
風通しの悪さまで指摘
その後も、システム障害は続出。金融庁は9月22日、システムの更新や更改がさらなる障害の連鎖を招きかねないと判断し、みずほとFGに店舗システムからスマートフォンのアプリまでありとあらゆる更新・更改を報告するよう業務改善命令を発動した。
大手新聞社の担当デスクは、「この命令で、みずほは金融庁にお伺いを立て、許可がないと何もできなくなりました。実質的に更新手続きを管理する措置とも言えます」と語る。だが、金融庁が強権を発動したにもかかわらず、みずほ銀行では命令の1週間後の9月30日に、外国為替送金ができない状態となった「8度目のトラブル」が発生した。
「金融庁がシステム更新を厳しく監視する中、『9度目のトラブル』は幸い起きず、同庁は11月中旬に検査を終了しました。金融庁は検査の内容を踏まえ、11月26日に最終的な業務改善命令を発動し、『短期間に複数のシステム障害を発生させ、個人・法人の顧客に重大な影響を及ぼした』と、命令で経営陣の責任を厳しく問いただしたのです。また、『(経営陣から現場の中堅幹部、IT担当者まで)言うべきことを言わない、言われたことだけしかしない』と、みずほ、FGの企業統治での風通しの悪さをずばり指摘しました」(同)
大手銀行幹部も、「行政処分で社内の組織性まで指摘するような表現を用いるのは極めて異例です。過去の経験から何も学ばないみずほへの金融庁のいらだちが明確に表れています」と驚く。
「外為法で是正命令」は金融史の汚名
さらに、この金融庁の検査では、みずほが昨年9月に発生した外為取引トラブルへの対応で、法令違反を犯していたことも発覚した。みずほは外為取引での海外送金の遅延を避けるため、外為法上不可欠なマネーロンダリング(資金洗浄)の事前確認を省いて送金を実施していたのだ。
「金融庁の報告を受け、財務省は11月26日、外為法に基づく是正措置命令を発出しました。銀行が外為法で是正命令を受けるのは、1998年の改正外為法施行後初めてです。金融史に汚名を残すことになってしまいました」(大手新聞経済記者)
この金融庁の処分を受け、FGの坂井社長、みずほの藤原頭取は22年4月1日付で辞任すると発表した。FG内の主導権争いで「暗躍した」(金融関係者)とされる佐藤康博FG会長の退任も決まった。藤原頭取の後任には加藤勝彦副頭取が就くことがすでに決まり、社長の後任も指名委員会が選定を急いでいる。新経営陣の最大の課題が「失われた信頼の回復」であることは間違いない。
というのも、ATMなどのシステム障害が起きたことで、個人顧客の間では「怖くてみずほを使いたくはなくなった」「スマホアプリも使いにくい」といった不安や不満が高まり、若者を中心に利便性が高いインターネット銀行などへのシフトが進みつつある。みずほ側でも、FGの坂井社長は昨年11月の中間決算発表で、「口座解約が多少は増加している」と明かしている。
さらに法人の顧客からも「これからもシステム障害が続くようであれば、取引を見直さざるを得ない」(中堅メーカー)、「みずほの社風が変わらなければ、問題を起こしていない他のメガバンクとの取引を増やすよう株主から提案を受けかねない」(東証上場企業)といった声も出ている。金融機関の競争が激化する中、個人、法人の顧客離れが進めば致命的な打撃になるだろう。
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