「林芳正」外相の選挙を巡り「山口県副知事」を書類送検 背後に“県政のドン”

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選挙違反疑惑の背景

 実はこの選挙違反には林氏と柳居氏が深く関与しているのだが、捜査の経緯を説明するには、まず、柳居氏が林氏を支援するようになった理由を説明せねばなるまい。

 先の県政関係者によれば、

「柳居さんが林さんを強く応援するようになったきっかけは10年ほど前でした。11年に柳居さんは政務調査費でカレンダーを作成したとして、議会で問題視されたことがあったんです。それを批判していたのが当時県議の河村建夫さんの実弟だった。柳居さんは“追及をやめてほしい”と兄の河村建夫さんに泣きついたものの、断られてしまった。それを逆恨みし、“反河村”として林氏を強力に推すようになったのです」

 今回の衆院選に際し、柳居氏は地元もまとめあげた。

「柳居さんは総理大臣、権力者が好きな風見鶏のような人です。林さんを総理にしたいと、この衆院選で地元県議を“オール林”でまとめました」(同)

 柳居氏の影響力はお隣の選挙区、山口4区の安倍晋三元総理にも及んでいると解説するのは、政治部デスク。

「実は山口3区を巡り、河村さんと林さんが争っていた時、安倍さんは周囲に“河村さんが林さんを選挙で倒せばいいんだ”と語っていました。林さんの親の代からの地盤は安倍さんの4区の下関です。後継のいない安倍さんからすれば、林さんが衆院で力をつけていけば、自身を脅かす存在になりかねない」

 しかし、柳居氏が河村氏を事実上、政界から追い出したことで、林氏は難なく当選。

「地元の力が強くなった林さんを警戒し、安倍さんは“共存共栄”すべく、林さんと協力関係を築いていました。22年以降、山口県は衆院の定数が4から3に減ります。安倍さんも自身の選挙区を守るため、林さんと手を打ったというわけです」(同)

組織的な勧誘が

 その柳居氏の強大な力を背景に行われたのが、先の衆院山口3区での“選挙違反”だった。捜査の詳細について、地元政界関係者が声を潜める。

「県庁では小松一彦副知事も数時間に及ぶ聴取を受け、部次長も対象になっていました。聴取の中身は、職員が公職選挙法で禁じられている地位を利用した選挙運動を行ったのではないかというもの。林さんの後援会に入るよう県庁幹部から職員に対し、組織的な勧誘があったというのです」

 公平中立を求められる公務員は政治活動が制限され、中でも公務員がその「地位」を利用して選挙運動を行うことは禁じられている。

 元東京地検特捜部副部長の若狭勝氏が解説する。

「公選法における『地位利用』とは、公務員の上の立場にいる人が部下などに“あの候補者を応援するように”などと指示や依頼をすることです。特定の候補者の“後援会に入るように”と指示していたなら、それも地位利用にあたります」

 近年では、2017年に当時の稲田朋美防衛相がこの「地位利用」を指摘されている。同年6月に行われた東京都議選、自民党候補の応援演説で「自衛隊としてもお願いしたい」と発言し、世間からのバッシングを浴びた。国務大臣や国会議員は国家公務員の特別職となるので、発言が「地位利用」にあたると野党が批判したのだ。

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