渋沢栄一の玄孫が語る「Z世代の投資ブーム」 デジタルネイティブが経済に与える影響とは

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 岸田文雄総理が設立した「新しい資本主義実現会議」の有識者メンバーで、コモンズ投信取締役会長兼ESG最高責任者の渋澤健氏(60)は、渋沢栄一の玄孫である。彼が期待を寄せるのがZ世代、すなわち1990年代後半から2000年代に生まれた若者たちだ。コロナ禍で増えているというZ世代の「投資デビュー」は社会に何をもたらすのか。以下、渋澤氏が語る。

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 私の祖父の祖父である渋沢栄一の言葉に、「よく集め、よく散ぜよ」というものがあります。「よく集め」については言わずもがなですが、「よく散ぜよ」とは「お金を循環させよ」ということに他なりません。そして、お金を「散ずる」方法の一つが「投資」です。

 我が国では、投資には「お金持ちの遊び」というイメージがあります。よく、「株をやる」「投資をやる」という表現をしますが、誰も「預金をやる」「保険をやる」とは言いませんよね。このことからも投資というものについた固定観念がうかがえます。

 私が「コモンズ投信」という会社を2008年に立ち上げた頃、少額を長期的にコツコツ積立投資しましょうという事業をやっていたのは、独立系の会社数社のみでした。しかし、14年にNISAの制度が始まり、その4年後につみたてNISAという優遇制度が始まったことで状況は一変。大手金融機関やオンライン証券も積立投資に参入してきたのです。つみたてNISAは、年間40万円までの積立であれば20年間、その金融所得に対して課税されない、という制度です。

 このような動きが、若い世代が投資に関心を持つ、大きなきっかけになったといえます。また、オンライン証券も、全ての手続きがネット上で完結するよう整備されているところが多く、若者のライフスタイルに合った選択肢が増えています。コロナ禍以降、オンライン証券の20代の口座開設が劇的に増えている印象があります。コロナ禍が将来のことを考えるきっかけになったのではないでしょうか。

不安を軽減

 投資は「資金を投げる」と書きます。そうしたことも、投資について回るマイナスイメージの原因なのでしょうが、英語だと投資は「invest」。「ベスト(チョッキ)の中に入れる」、すなわち「何かを身に着ける」ことを意味するのです。

 Z世代はデジタルネイティブであり、ネットで情報を集めることに慣れています。彼らは自分で調べた情報を元に、ごく気軽に投資を始めている印象があります。そして、デジタルネイティブだからこそ、彼らは社会に対する関心が高いと思います。自分の目の前のことだけではなく、全体を俯瞰する視点を持っている人が多い印象があります。まさに、投資を通じて社会から何かを得る「invest」の考え方を実践しているように思います。

 Z世代の人たちは、未来に対する不安を軽減するため、あるいは希望を持つために、つみたてNISAで毎月数千円を積み立てたりしているのではないでしょうか。そして40年くらい経った頃、大事な資産が形成されていると思います。また、彼らが投資に参画することで、経済社会の新陳代謝も良くなっていくでしょう。Z世代がこれからの時代の成功体験モデルを作ってくれると期待しています。

週刊新潮 2021年12月30日・2022年1月6日号掲載

ワイド特集「『人間研究』寅の巻」より

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