供述調書でひもとく「積水ハウス事件」の内幕 「生保レディ」が「地面師の女」になるまで

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土地売却を相談

 積水ハウスが地面師に55億円を騙し取られた事件の舞台は、東京・五反田の「海喜舘(うみきかん)」の跡地。もとは海喜舘の女将だった海老澤佐妃子さん(享年72)が所有していた土地。捜査当局の供述調書には、羽毛田正美(当時64)なる生保レディが佐妃子さんになりすました過程が克明に記されている。

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 佐妃子さんの兄弟も警察から事情聴取されており、その一人の供述調書を入手した。

 それは、佐妃子さんが2017年2月に入院し、担当医から〈胃がん ステージ4〉と宣告される述懐などで始まり、海喜舘の歴史にも触れている。戦前から呉服屋を営んでいた佐妃子さんの祖父が昭和30年代前半に病気で寝たきりになり、祖父の後妻が生活のために下宿屋を始めたという。海喜舘のルーツだ。

 下宿屋は割烹旅館となり、たいそう繁盛したが、〈平成20年ころからだったでしょうか、佐妃子さんは身体の不調も重なって、泊めるお客様も本当の常連様だけにして、従業員を減らし平成22年に旅館業を廃業して海喜館をたたみました〉

 廃業から6年ほど経った16年秋頃、佐妃子さんは土地の売却を知り合いに相談した。その知り合いが買い手を探す過程で、地面師グループの一人に佐妃子さんの個人情報が漏れ伝わり、事件は引き起こされたのだ。

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