“球界の七不思議”ほとんど一軍で活躍していないのに、引退しない選手は何が違うのか

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バッテリー以外の全ポジション

 白浜以外にも捕手は特殊なポジションのため、控えでも長く現役を続ける選手が多いが、今回はそれを割愛して、内外野を守ることができる熊代聖人(西武)を挙げたい。

 今治西時代では3度甲子園に出場し、3年夏にはエースで4番としてチームのベスト8進出に大きく貢献。卒業後は社会人野球の日産自動車に進み、同チームの休部に伴って王子へ移籍した後、10年のドラフト6位で西武に入団した。1年目から外野のバックアップ要員として一軍の戦力となり、12年からは2年連続で100試合以上に出場。しかし、15年以降は出番が大きく減り、21年までの7年間に一軍で放ったヒットはわずか12本である。
 
 この数字だけ見るといつ戦力外になってもおかしくない状況だが、大きな武器となっているのは、そのユーティリティさと言える。外野手登録だが、今年もバッテリー以外の全ポジションを守り、堅実なプレーを見せた。

 昨年からのコロナ禍で故障以外でもレギュラーが突然離脱するケースも増えており、こうしたチーム事情も熊代にとっては“追い風”だ。熊代と同じユーティリティプレーヤーとしては、生え抜きではないものの、競争の激しい巨人に10年在籍する立岡宗一郎や、プレーだけではなくその明るいキャラクターでも存在感を見せている杉谷拳士(日本ハム)なども、同様の理由で生き残っている。

底はまだ見えていない

 一方の投手では、ロッテから戦力外になりながらも中日に育成選手として移籍した大嶺祐太が目立つ。06年の高校生ドラフト1位でプロ入りし、09年には5勝、15年には8勝をマークしている。だが、故障が多く2019年オフには自由契約となり育成選手として再契約。翌年8月には支配下選手に復帰したが、21年オフに2度目の自由契約となった。

 16年以降の6年間で一軍では4勝にとどまっており、現在33歳という年齢を考えると、育成契約とはいえ現役続行を勝ち取ったこと自体が驚きではあるが、その理由としては、やはりスケールの大きさが影響しているのではないか。高校時代から素材の良さに対する評価は高く、度重なる故障があっても150キロを超えるスピードをマークしており、選手としての底はまだ見えていない。このオフに引退した川原弘之が、プロ通算0勝ながら、12年間もソフトバンクに在籍できたのも同様の理由と言えるだろう。

 プロの世界で激しい“生存競争”を生き延びている逞しき選手たち……プレーを見る機会は限られているが、その奮闘に期待したい。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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