公務員のボーナス0・15ヶ月削減「先送り」 官邸官僚が考える給与削減阻止の理屈

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ベンチマークは「給与の増加」

 2022年の経済政策における最大の焦点は、多くの人々の「給与」が増えるかどうかだろう。岸田文雄首相が繰り返す「新しい資本主義」の中味は今ひとつ判然としないが、成長の果実を分配することだと力説しており、ベンチマークは「給与の増加」になるはずだ。ところが、経営環境の厳しい民間企業の給与引き上げは簡単には実現しそうにない。

 それならば、ということなのかどうか。大盤振る舞いの予算を使って「公的部門」の給与引き上げを行う心積もりのようだ。果たしてそれで、日本経済を復活させることができるのか。

「12月に国家公務員や地方公務員のボーナスが支給されましたが、ちょっとした混乱が起きました」と語るのは大手新聞の地方部デスクだ。

「人事院が昨年10月に0.15カ月の引き下げを勧告したのを受け、東京や大阪、愛知など主要都道府県が12月のボーナスを引き下げました。しかし、国は勧告の実施を先送りし、22年夏のボーナス額で調整することになったのです。選挙があって国会審議ができなかったためと説明していますが、過去に例がない異例の措置です」

 支給を遅らせるというのなら話は分かるが、引き下げ勧告の実施を先送りし、前年並みの月数を支払ったというのだ。

官僚たちは不満タラタラ

「2021年6月に民間人で女性の川本裕子・早稲田大学大学院教授が人事院総裁に就任しました。コンサル出身の川本さんは早速独自色を出し、霞が関の働き方改革を打ち出す一方で、民間よりも高く設定されているボーナスの引き下げを勧告したのです。新型コロナの影響で民間のボーナスは減少傾向ですから、さすが民間出身だけあって感覚はまとも。ところが、わずか0.15カ月の引き下げにも霞が関の官僚たちは不満タラタラでした」

 それを岸田内閣は「先送り」にしたわけだ。議会日程が理由というものの、霞が関への「配慮」が透けて見える。閣僚からは「公務員のボーナス引き下げは景気にマイナスになるので先送りは当然」という声も出ていた。

「人事院勧告では、月給は据え置きになっています。民間給与との差は小さい、という結論でしたが、調査の比較対象はあくまで大手企業。民間の感覚からすると公務員給与はかなり恵まれていると映るはず。リストラに遭うリスクはゼロですし、毎年のように昇進昇格していきますから、役人天国と言われても仕方ないのが実情です。据え置きになったことで、2022年の夏は引き下げが議論を呼びそうです」(前出の政治部記者)。

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