憂鬱な通勤生活が始まる… 究極の2階建て車両もあった「電車の混雑対策」5選

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(3)座席収納車

■増結用としての座席収納車だった阪急電鉄8200系

 多扉車の項でも少し触れたが、「座席を収納する」というのはもっともシンプルな混雑対策といえる。阪急電鉄は神戸線の朝ラッシュ時の増結車(途中駅で連結される車両)として、1995年にロングシートを収納式にした8200系を導入した。立席スペースを拡大させ、吊り手を増やし、通路にスタンションポールを設けた。吊り手は関西の鉄道では珍しく、首都圏と同じ握りやすい三角形とした。また、ほかの神戸線車両と同じ3ドア車ながら、開口幅を1.3メートルから1.5メートルに拡大したワイドドア車でもあり、乗降時間の短縮も図った(開口幅の拡大に伴い側窓は1両あたり6か所減ったが、その分、寸法を拡大した)。

 しかし、不況や少子化など阪急電鉄における社会情勢の変化が大きく影響したことで、2008年に収納式座席が撤去され、従来の固定式ロングシートに置き換えた。吊り手も関西の鉄道では一般的な円形に取り換えられた。“普通の車両”になったものの、8200系は、現在も朝ラッシュ時の増結車として黙々と走り続けている。

(4)JR東日本の通勤客向け2階建て車両

■現在も続くのは普通列車用グリーン車のみ

 JR東日本の2階建て車両は多数存在しているが、ここでは通勤客向けに絞らせていただく。

 国鉄時代から首都圏の普通列車用グリーン車は自由席扱いで、ラッシュ時は必ずしもすべての乗客が着席できるわけではなかった。それを解消すべく、1989年に登場したのが2階建てグリーン車で、東海道本線用としてデビューした。

 通勤やビジネス客向けのため、荷棚は平屋席(両端の席)にしか設けられていないという欠点があるものの、現在は首都圏を走る普通列車用グリーン車がこの仕様だ。

■究極の2階建て車両が登場したが……

 1991年には、常磐線415系1500番台に「2階建て普通車」が登場した。土浦方の先頭車として運用に就く。2階建てグリーン車とは異なり、一部を除きボックスシートであるのが特徴。特に2階席は一部を3人掛けにして、座席定員の増加を図った。

 しかし、立席スペースが平屋部分のみであること、ラッシュのピーク後に運行され、日中の運用がなかったことから、量産化には至らず、2006年に廃車された。

 遠距離通勤客にとってみれば夢のオール2階建て車両もあった。

 その第1弾は1992年登場の215系。朝晩は東京―小田原間の〈湘南ライナー〉(有料の定員制列車)、日中は東京―熱海間の快速〈アクティー〉として運用された。

 しかし、すべて2ドア車のため、快速〈アクティー〉運用時は乗降に時間を要し、遅延が度々発生。2001年12月1日のダイヤ改正で撤退となった。晩年は〈湘南ライナー〉、新宿―小淵沢間運転の臨時快速〈ホリデー快速ビューやまなし〉で運用されていたが、2021年3月13日のダイヤ改正で営業運転を終了。そのまま引退した。

 第2弾は新幹線のMax(「Multi Amenity eXpress」の略)で、1994年にE1系、1997年にE4系が登場した。特にE4系は16両編成運転時、座席定員は世界最大の1634人が話題となった。

 しかし、重心が高い車両のため、スピードアップに難があった。さらに車両の老朽化も重なり、E1系は2012年10月28日、E4系は2021年10月17日に引退した。

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