憂鬱な通勤生活が始まる… 究極の2階建て車両もあった「電車の混雑対策」5選
(2)ワイドドア車
■開口幅で明暗が分かれる
扉の「数」ではなく「広さ」での工夫が、「ワイドドア車」である。1991年、20メートル4ドア車のまま、乗降用ドアの幅を広げたワイドドア車が小田急電鉄1000形の増備車にて登場したのが始まりだった。開口幅は、従来車の1.3メートルから2メートルに拡大。ただし、乗務員室寄りのみレイアウトの関係から1.5メートルとした。開口幅の拡大に伴い、当初、ロングシートは1000形従来車の最大7人掛けから5人掛けに減ったが、のちの増備車では6人掛けに変更された。
1000形ワイドドア車は合計36両導入された。さらに1995年にデビューした2代目2000形では開口幅を1.6メートルに見直し(乗務員室寄りのみ1.3メートル)、ロングシートは最大7人掛けとなった。のちに1000形も2代目2000形に準じた改造が行なわれた。
2019年から新型車両2代目5000形の導入に伴い、廃車が進められ、現在は6両車1編成のみ在籍しており、消滅が近づきつつある。さらに2018年3月の小田原線複々線完成により、世田谷代田―下北沢間の混雑率が194%から150%台(コロナ禍の2020年度は118%)に緩和されたことで、新たなワイドドア車が登場することもないだろう。
小田急電鉄と対照的に、ワイドドア車に積極的なのは東京メトロだ。営団地下鉄時代の1991年夏に、東西線05系の増備車としてワイドドアが採用された。開口幅は1.8メートル、乗務員室寄りのみ従来通り1.3メートルとした。ロングシートは最大6人掛けとしており、座席定員の減少を最小限にとどめている。
05系ワイドドア車は5編成の導入にとどまったものの、東京メトロは2010年に“当初からワイドドア”の15000系を世に送り出す。先頭車の長さを従来の車両から若干延ばすことで、乗務員室寄り車両を含めすべての開口幅が1.8メートルになった。2017年まで16編成が導入され、今も東西線の混雑緩和策を強化している。
さらに東西線はドアピッチ(乗降用ドアの間隔)の異なる車両が多いことから、東京メトロが大開口ホームドアを開発し、実用化。東京メトロでも、03系の5ドア車とは対照的な展開となった。
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