レギュラークラスは西武「金子侑司」だけ…スイッチヒッターはなぜ減ってしまったのか【柴田勲のセブンアイズ】
現在は絶滅危機
プロ野球で年々少なくなっているのがスイッチヒッター(両打ち)の選手だ。現在、セとパの両リーグ合わせて10人ほどだ。巨人・若林晃弘、中日・加藤翔平、西武・金子侑司(※1)、日本ハム・杉谷拳士、オリックス・佐野皓大、阪神・植田海らだ。レギュラークラスは金子くらいかな。
私は1962年にスイッチヒッターに転向し、63年にレギュラーになった(※2)。この成功を受けて、70年代前半からスイッチヒッターが増え始め、80年代から90年代前半にかけてピークを迎え、以後は徐々に減り、現在は絶滅危機なんて言われている。
ご存じの通り、左投手に対しては右打者の方が打ちやすく、右投手に対しては左打者の方が有利、これは野球の常識だ。右、左の両方で打てるスイッチヒッターはどの投手に対しても優位だ。特に右打ちが左打ちもマスターすると一塁が一歩半くらいは近くなる。出塁率は高くなるはずだ。
もっと挑戦する選手が出てきてもいいと思うが、これも時代の流れだろう。いまは足が速かったら親や指導者たちは子供の頃(少年野球)、高校野球から左打ちを勧める。本人自ら進んで右から左に転向するケースも結構多い。打線にも変化がつく。野球は左打者が有利になっているし、左投手より右投手が圧倒的に多い。
左の強打者・好打者は多い
スイッチヒッター転向は早ければ早い方がいいが、高校生以下の野球指導者はまず、スイッチヒッター転向を勧めない。高校生のスイッチヒッターはきわめて少ない。
両打ちを指導できる人材に欠くし、スイッチに挑戦となると右、左の打撃練習を単純に考えても他の選手の2倍はする必要がある。だが、スイッチに取り組んでいるといって練習時間を他の選手の2倍もらえない。グラウンド以外の打撃練習が重要になるものの、いまは練習時間の制約がある。行き過ぎた練習や特訓はともすれば問題になることもある。
限られた打撃練習の時間内でいかに効率よく左右打ちの練習をするかだが、それよりも左打ちの練習を徹底的にさせた方がいいし、やった方がいい。左投手を苦にしない左の好打者を目指す。実際、そういった名選手は大勢いる。
94年にイチローが当時最多の210安打で首位打者を獲得するなど大ブレークし、松井秀喜も大活躍した。金本知憲、前田智徳、福留孝介、阿部慎之助、高橋由伸らが実績を残した。最近では柳田悠岐、丸佳浩、青木宣親、吉田正尚、村上宗隆、そしてメジャーで大活躍中の大谷翔平らである。左の強打者・好打者は多い。
彼らは右投げ左打ちの選手だ。現在の球界を見渡しても右投げ左打ちの選手は多い。元来、右打ちから左打ちに変える選手はいたが今後もその傾向は続くのではないか。
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