NHK「受信料」値下げ法案 余剰金「1480億」の活用義務付けでも「痛くもかゆくもない」理由

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剰余金を値下げの原資に

 ちなみに、同レベルの内部留保を持つ民間企業を見てみると、たとえば三越伊勢丹ホールディングスは21年3月期の決算で、利益剰余金1388億円と発表している。20年は1836億円もあった。コロナ禍にあっても金が余るNHKとは違うのだ。

 NHKの剰余金は、約10年前の2011年に遡ると1413億円だった。現在とあまり変わりないようだが、この時には新社屋の建設積立金はまだなく、翌12年から積み立てを始めている。現在、建設積立金は1693億円。つまり20年度は、繰越剰余金1481億円と合わせて3174億円もの“剰余金”があるわけだ。

 肥大化し続けるNHKへの批判も高まり、総務省はNHK改革を掲げた。そこでNHKが経営計画(21~23年度)で提案したのが、経営をスリム化し、23年度までに700億円程度を確保して受信料を値下げする、というものだった。さらに、剰余金を積み立て、「受信料の値下げの原資」にしたいとの提案もされた。

 それに答える形で、総務省の「公共放送の在り方に関する検討分科会」が公表したのが「公共放送と受信料制度の在り方に関するとりまとめ」だ。改めて見てみよう。

東日本大震災でも黒字

「繰越剰余金の受信料への還元」については、《適正水準以上の剰余金は、視聴者に還元すべきであり、受信料の引下げによってその適正化を図ることが適当である》としている。その上で、《繰越剰余金の水準については、国民・視聴者の意見を踏まえ、明確かつ適正な水準とする必要がある》と注文を付けている。予算の組みようによっては「剰余金は出ませんでした」で、視聴者に還元する必要もなくなるからだ。

「とりまとめ」には、水準の検討に当たって考慮すべき点が挙げられている。
・《繰越剰余金は、1990年から2000年代半ばまで200~600億円で推移していたが、財政上の問題は発生していないこと》
・《2011年の東日本大震災後に際して、繰越剰余金の取崩しは行われなかったこと》
・《NHKは、放送法に基づき放送設備の建設又は改修の資金の調達のため、経営委員会の議決を経て、放送債券の発行が認められていること》

 東日本大震災の時でさえ、223億円の黒字経営だったとは驚きだ。また、放送債券の発行が認められているにもかかわらず、1693億円も積み立てていたというわけだ。だからこう警告している。

《積立金が蓄積されているにもかかわらず、受信料の引下げを実施しない場合には、国民・視聴者に対してその理由について説明責任を果たすべきである》

 さらに、《NHKにおいては、予算消化を目的とする不要な支出が生じないよう、これまで以上にチェック体制を確保することが必要》と。

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