ヨーグルト以外の「ヤセ菌」食材とは 朝食に「発酵性食物繊維」の理由は?
酢酸、酪酸、プロピオン酸の働きとは
この短鎖脂肪酸には酢酸、酪酸、プロピオン酸という三つの種類があり、それぞれ具体的な働きについて研究が進められている。
「酢酸は腸の中を酸性にして有益菌が働きやすい環境にし、酪酸は腸の上皮細胞に取り込まれて栄養源になり、腸の機能を改善します。プロピオン酸は抗酸化作用が強く、体内の慢性炎症を抑える働きがあることが最近の研究で報告されています。腸内細菌は炭素数が奇数の脂肪酸を作ることが得意で、偶数の酢酸、酪酸に対して、プロピオン酸の炭素数は3ですから、腸内細菌が作るのはプロピオン酸が多くなるかもしれません。血中に奇数の脂肪酸が多い人ほど心筋梗塞や血管障害の発症率が低いという疫学データもあります」(板倉医師)
食品では主に、酢酸はもろみ酢のような発酵した酢に、酪酸は乳製品に、プロピオン酸は発酵食品などに含まれる。だから、それらの食品によっても短鎖脂肪酸を取り込むことが期待できるが、効果は一時的。腸内で継続的に腸内細菌に作ってもらうほうが高い効果が得られるのだ。
「それには食物繊維やオリゴ糖を栄養源にする腸内細菌を増やすことでしょう」
と先の後藤医師。
腸内を弱酸性に
腸内細菌の働きは、大きく発酵活動と、腐敗活動に分かれる。発酵と腐敗、どちらが体に良いかは味噌やヨーグルトなどの発酵食品と、腐った食べ物を比べて考えるとわかりやすいだろう。ちなみに腸内細菌の分類を「善玉菌」「悪玉菌」「日和見菌」と表すことが多いが、近年の研究では善玉菌とされる腸内細菌でも体に良い働きをしなかったり、悪玉菌も必ずしも有害なものばかりではなく、むしろ必要な腸内細菌もあることから、本稿ではあえてその言い方をしていない。
「糖分や食物繊維を食べて発酵させ、乳酸や短鎖脂肪酸などをつくることで腸内を弱酸性にする腸内細菌は概ね有益な菌といえるでしょう。一方で腸の内容物を腐敗させ、発がん物質などの有害物質をつくり、腸内をアルカリ性にする腸内細菌もいます。腸内で短鎖脂肪酸を作ってもらうためには、私たちが食物繊維やオリゴ糖を取り、それをエサとする腸内細菌を増やすことが必要です。外から入ってくる悪い細菌も、多くはアルカリ性の環境を好むので、腸内を弱酸性にする有益菌を増殖させることは、免疫力の強化にもつながります」(後藤医師)
食物繊維には水に溶けにくい「不溶性食物繊維」と、水に溶けやすい「水溶性食物繊維」がある。2種類の食物繊維は体内での働きに違いがあり、不溶性は水分を吸収してかさを増やし、満腹感を得やすくする。一方、水溶性はゲル状であるため、余分な糖質を包み込んで体外に排出して血糖値の上昇を緩やかにするなど、生活習慣病を予防する。肥満を防止してくれる短鎖脂肪酸が作られやすいのは、水溶性食物繊維のほうだ。
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