人材流出で技術が中国、韓国に漏洩…「日本製半導体」が凋落した理由とは

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早すぎた日本政府の諦め

 しかしその後、円高とリーマンショック、東日本大震災で急速に経営が悪化。12年にエルピーダは破綻に追い込まれた。最終的にエルピーダは、米マイクロン社に1100億円の債務を委譲する形で売却された。

 その後、坂本氏自身はコンサルタントに転身。台湾と中国に進出し、米国の経済制裁対象となった「清華紫光集団」の半導体企業の元役員と組み、一昨年子会社の「IDT」を川崎市に設立したものの、今年6月に会社を閉鎖している。

 その理由を「新型コロナの影響だ」とする坂本氏自身が当時をこう振り返る。

「日本の企業の半導体事業は事業部の一つに過ぎず、半導体企業の社長といえど、投資予算や人件費は全部本社が握り、事実上は社長ではなかったことが大きかったと私は思います。企業から人をスピンアウトさせても、なかなか上手くいかない。エルピーダへの300億円の政府補助金にしても、とてもこれでは無理だと思いました。やはり当時でも3千億円は必要で、いまでもTSMCは政府から4千億円受け取るとされていますから、1桁違いました。日本政策投資銀行からも、100億円の融資と約300億円の出資金の合計400億円でしたが、それしか出ないなら仕方がないだろうなと思っていた」

 エルピーダ破綻は経営トップの坂本氏の責任も当然大きいが、いま検証すると、経産省など日本政府の諦めも早過ぎたといえる。

再度ナンバーワンを目指すべき?

 今年5月に自民党の半導体推進議連を設立した甘利明前幹事長はこう語る。

「過去の日本半導体の敗因は、まず80年代に大型コンピューターからパソコンに移行する際、CPUを作る能力も含めてその時流の変化に気付かずに、安いメモリやCPUが使われるようになっても、とにかく高い品質にこだわり、乗り遅れてしまった。さらには、日本の独自の製造プロセスにおける旧態依然とした自前主義、業態の構造としては垂直統合型システムによる弊害などの問題があった」

 国の支援で失敗した「日の丸半導体」については、

「日本は自国システムの自前主義に陥ると、ユーザーの目線が通りにくくなり、アップルのようなユーザー向け仕様の製品が出てきません。もっと設計を重視するファブレス企業を作り、(価値や強みを持つ)シーズや(ユーザー重視の)ニーズを敏感に察知すべきだったのです。しかし、日本はまだ国内の半導体のマザーマシン(装置)や材料の分野では、世界のシェアを確保している。だから、日本の半導体は、いまのうちに国際的な連携によってジャパンアズナンバー1・アゲインを目指すべきです」(同)

 実は、日本の半導体は、国内の「内的要因」以外にも、為替や国際情勢の「外的要因」に影響されやすい。

 19年、トランプ政権下の米国は、米中対立(デカップリング)政策の中、ファーウェイを含めた中国の半導体製品に対し、厳しい規制や制裁を開始した。

 同時に台湾のTSMCに対しては、中国に輸出していた先端半導体の調達を停止させ、米国内で工場建設を誘致するという「台湾融和工作」を進めた。

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