麻布、開成…中高一貫校でコロナ世代に起こった“奇跡”とは オンライン文化祭などで見せた驚異の適応力
コロナ世代が得たもの
ピンチをチャンスととらえるたくましさが感じられる。ほかにも似たような主旨の回答が多数寄せられたと、若井由佳教諭は言う。学校全体にポジティブ・シンキングが浸透しているのだろう。入学直後から自己肯定感を高く保つ教育に力を入れている成果ともいえる。
一方で、女子学院中学校・高等学校の生徒指導担当教員からは次のような意見が寄せられた。
「大人も暗中模索の状況です。その大人から指示を受けて我慢を強いられる生徒たちのストレスには計り知れないものがあります。きっと将来には『コロナ世代』という言葉が使われると思いますが、この言葉がポジティブな表現として使われるためには、もっともっと子どもたちの内面の変化やストレスに、大人が耳を傾けていかなければならないと思います」
普連土学園中学校・高等学校では、一人の高校生が校長室にやって来て、
「部活や行事を簡単に中止にしないでほしい。ましてや簡単に休校などしないでほしい。家庭で難しい状況を抱えていて、学校にいる間だけはつらいことを忘れられるというひとも、友人の中にはいるから」
と訴えたという。
「もしこの生徒たちを『コロナ世代』と呼ぶことがあるのだとするならば、ともすれば当たり前の日常として通り過ぎてしまうものの本当の大切さを、身をもって知ることのできた世代といえるのかもしれません」(池田雄史教諭)
大人の目配りの大切さ
2021年10月13日に文科省が発表した「令和2年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要」によれば、前年度に比べ、小・中学校における不登校児童生徒数は約8.2%増えた。自殺者は調査開始以降最多を記録した。
なお、21年5月に実施された「全国学力・学習状況調査」の結果を分析した文科省は、一斉休校による学力への影響について、「全体では見られなかった」との見解を示している。一方、アンケート結果からは、子どもたちが学業に不安を感じたり、計画的な学習に課題を感じたりしていたことも浮き彫りになっている。
コロナ禍以前から、学力格差は存在した。むしろ懸念されているのは、コロナ禍で格差が一層拡大することだ。
その点、無料塾「中野よもぎ塾」代表の大西桃子さんは、
「もともと学校の授業についていけていなかった生徒たちにとっては、この休校期間が『学習の遅れ』を取り戻す絶好の機会になりました」
と証言する。
大西さんが運営する無料塾では、経済的な理由で進学塾に通えない中学生を対象に、ボランティアスタッフが無料で学習指導に当たっている。通常は公的な施設の会議室を教室代わりに使っているが、コロナ禍では思い切ってオンライン授業に切り替えた。手探りだったが、やってみると意外と簡単にできた。
しっかりと目を配ってくれる大人さえいれば、子どもたちはコロナ禍でもたくましく育つのだ。
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