麻布、開成…中高一貫校でコロナ世代に起こった“奇跡”とは オンライン文化祭などで見せた驚異の適応力
いろんな国に旅行に?
小学生親子を対象にした進学相談会で麻布中学校・高等学校(以下、麻布)を訪れたある保護者は、麻布名物の「論集」をパラパラとめくり、驚いた様子で教員に質問した。「麻布の生徒さんは(コロナ禍にもかかわらず)いろんな国に旅行に行っているみたいですが、そういう課題でもあるのですか?」。教員としては、してやったりだった。
保護者が目にしたのは、中1の夏休み恒例の社会科課題「仮想旅行記」の優秀作品だった。本やインターネットを駆使して、行ったことのない国や地域に関する情報を集め、あたかも本当にそこに行ってきたかのような旅行記を書いて提出することになっているのだ。
「コロナ禍で海外旅行が難しい中、生徒諸君は想像力豊かに世界を旅していたのだなと思いました」(駒直樹教諭)
以上は、それぞれの学校の名物が、コロナ禍でも存在感を示した例といえる。
休校期間にフリーペーパーを作成
奈良県の東大寺学園中・高等学校(以下、東大寺学園)の生徒会長である谷津凛勇(たにつりんゆう)さんは、高1だった休校期間中に暇をもてあまし、児童書紹介フリーペーパー「月あかり文庫」を創刊した。
谷津さんは幼いころから子ども文庫(民間の人が自分で集めた絵本や児童書を中心とする蔵書を地域の子どもたちに無料で貸し出す小規模図書館)に通い、これまでに4千冊以上を読破してきた。
子どもの読書離れが社会問題とされる中、自分と同じような「本の虫」を増やし、「より良い読書体験で自立する読者を育てる」ことを目指す。全国から集まった高校生~社会人の7人で、子どもの読書文化振興NPO(任意団体)、Dor til Dor も立ち上げてしまった。
この活動が評価され、「全国高校生マイプロジェクトアワード2020」では全国優秀賞、「読者大賞2021」では「事」部門大賞を受賞。「ASHOKAユースベンチャー」にも認定された。
谷津さんにとって休校期間は、自分が本当にやりたいことに気づき、それを実行するために与えられたボーナスタイムだった。ちなみに東大寺学園には正規の授業として「読書」がある。国語の教員が文庫本などを、生徒に読み聞かせるのだ。問題を解くための国語ではなく、純粋に読書を楽しむ姿勢を忘れさせない意図がある。
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