「フレイル」「ロコモ」を放置すれば要介護に 中高年が知るべき対策方法とは
指輪っかテスト
更には、
「筋力減少を確かめるために、『指輪っかテスト』を試してほしいと思います」
と述べるのは、諏訪中央病院名誉院長の鎌田實氏。
「両手の親指と人差し指で輪っかを作り、ふくらはぎの一番太い部分を囲んでみてください。隙間ができている場合は、すなわち筋量が低下している。フレイルの可能性があります」
その克服のために鎌田氏が近著『60代からの鎌田式ズボラ筋トレ』で提唱するのは、掲載の図のトレーニング。
「『スロー・スクワット』は肩幅よりもやや広く足を開いて立ち、7秒ほどかけて、太ももが床と平行になる深さまで腰を下ろす。そして7秒ほどかけてもとの体勢に戻します。これを1セット5回で1日2セット」
「かかと落とし」は、かかとを床につけたままつま先を上げ、3秒キープ。続けてつま先立ちになり、やはり3秒キープし、1セット10回を1日3セット行う。
「壁立てふせ」は、
「壁から70センチほどのところに立ち、腕立てふせの要領で手をつき、腕の曲げ伸ばしをする。これを1セット10回で1日2セット行ってください。これらはどれも家の中でできるものです」
必要なタンパク質を補うために
コロナ禍でも可能なトレーニングというわけである。
「こうした運動に加えて、食生活の見直しもフレイルには効果的です」
と、鎌田氏が続ける。
「筋肉を衰えさせないためには、何よりタンパク質をたくさん摂ることが大事。厚労省によれば、成人に必要なタンパク質は1日50グラム。これが高齢者になると60グラムを推奨される。高齢者は筋力が減っていくわけですから、それを補うべくより多くのタンパク質が必要なのです。また、フレイル対策のために日頃から筋力を維持しておく『貯筋』をするためには、さらに多く、1日に体重×1.2グラムのタンパク質を摂るのが理想。70キロの人であれば84グラムになります」
肉や魚100グラムに含まれるタンパク質の量は20グラムほど。卵1個は6グラム、納豆1パック8グラム、牛乳1杯7グラム。なるほど意識して食事をしなければ満たせない量である。
「日本ではメタボ対策が行き過ぎたのか、高齢者は食事を減らしがち。しかし、高齢者であれば、痩せている人よりもちょっと太っている人の方が元気ですし、寿命も長いのです。まずはきちんと3食食べること。フレイルにはこうしたことからも対策できるのです」
運動と栄養。やはり基本の基が重要というわけだ。
「外来診療をしていると、ステイホームをしっかり守っている“真面目な高齢者”の方ほど、フレイルに陥っているように感じる」
コロナに罹らずとも、介護生活に陥っては本末転倒。
この冬は、老いにもコロナにも共に打ち勝つ生活を心がけたいものである。
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