「フレイル」「ロコモ」を放置すれば要介護に 中高年が知るべき対策方法とは
横断歩道が渡れない
問題の深刻さがわかる。
大内教授によれば、フレイルの診断で一般的なのは、国立長寿医療研究センターによる以下の基準だという。
〇半年で2~3キロ以上の(意図しない)体重減少
〇握力の低下(利き手で男性28キロ未満、女性18キロ未満)
〇ここ2週間、わけもなく疲れたような感じがする
〇歩行速度が1メートル/秒未満
〇定期的に運動・スポーツをしていない
この5項目のうち、3項目以上が該当すればフレイル、1~2項目が該当すれば、プレフレイルだとか。
大内教授が言う。
「歩行速度が1メートル/秒というのは、信号が青になってから点滅し始めるまでの間に横断歩道を渡れるかどうかの一つの目安。横断歩道を急がずに渡れなくなれば、フレイルを疑った方がいいかもしれません」
また、ロコモに陥っているかどうかを見分けるには、掲載の図の、二つのテストがわかりやすい。
まず、立ち上がりテスト。40センチの高さの椅子や台から片脚で立ち上がって3秒以上静止してみる。続いて2ステップテスト。図のように大股で2歩歩き、その長さと身長から「2ステップ値」を計測してみる。立ち上がりや静止ができず、2ステップ値も1.3未満であれば「ロコモ度1」と判定される。また、20センチの高さから両脚で立ち上がることができず、2ステップ値が1.1未満であれば「ロコモ度2」、30センチの高さから両脚で立ち上がれず、2ステップ値が0.9未満であれば「ロコモ度3」に該当するわけだ。
宮田院長が言う。
「これらのテストによって、足腰がどれくらい弱っているかが測れます。これに25項目の質問への回答を合わせてロコモ度は判定される。ロコモ度3ならフレイル状態、1~2もプレフレイル状態と判定されます」
効果的なトレーニングは?
もしこれらのテストで、フレイルあるいはプレフレイルに該当するならば、今すぐにでも対策を始めた方がよいのは、先に述べた通り。
そのためには、
「何より、しっかりと運動することが重要です」
と、宮田院長。
「高齢者の皆さんに運動を勧めると、ウオーキングに取り組む方が多い。しかし、歩くのは持久力が付くとしても、それだけでは筋力の強化には繋がりません。筋力を向上させるためには、最大筋力の40%以上の負荷をかけないと駄目なのです。保持するのにも20%以上の負荷が必要。でもウオーキングの場合、使う筋力は最大筋力の5~15%なのです」
そこで、宮田院長が勧めるのが、掲載の図の四つのトレーニングだ。
「片脚立ち」は、テーブルに片手をついて片脚を1分間上げたままにする。それを右脚、左脚それぞれ1日3セット。
「フロントランジ」は、テーブルの横に立ち、膝とつま先が同じ向きでグラつかないように片脚を前に出して重心を移動させる。手はテーブルにつき、腰の横になるように滑らせる。これを左右交互に5~10回を1日3セット行う。
「スクワット」は椅子に座って、テーブルに手をついて背すじを伸ばし、膝がつま先より前に出ないように立ち上がり、ゆっくりと座る。5~10回を1日3セット。
最後の「ヒールレイズ」は、踵同士を付けて立った状態で、つま先立ちを10~20回繰り返し、これを1日3セット行うという。
「いずれも安全に考慮してテーブルに手をついて行ってください。ポイントは“ちょっと頑張っているな”と感じるくらいは行うこと。楽にできる運動ではトレーニングになりません。『毎食後』など、時間を決めて行うとリズムが生れてよいかもしれません」(同)
[2/3ページ]