中村吉右衛門さんの悩み多き道程 「ガス管をくわえたことも」と苦悩を告白【2021年墓碑銘】

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孫の前では甘い“じいじ”

「鬼平犯科帳」の出演は89年から。時に45歳だった。

 演劇評論家の水落潔さんは言う。

「鬼平のおかげで名前を知ってもらえたと感謝する一方で、あくまで本分は歌舞伎役者という信念を持っていました。もちろんテレビを軽んじることはなく、人気に溺れることもなかった」

 06年から初代吉右衛門の功績を顕彰し、芸と精神を継承する秀山祭を始めた。初代の役の勘所を若手に丁寧に教えた。熱心なあまり、指導が事細かくてうるさくも聞こえたという。

 はとこにあたり、12歳年下の知佐さんと75年に結婚。4女を授かる。末娘の瓔子さんが13年に五代目尾上菊之助と結婚。ふたりの間に誕生した長男が、七代目尾上丑之助を名乗っての初舞台で共演。孫の前では、甘い“じいじ”になっていた。

 今年3月末、公演後の食事中に倒れた。心臓の発作と見られる。復帰はかなわず、11月28日、77歳で逝去。
 
 孫とのさらなる共演、80歳でも弁慶を演じることを目標に一生修業を貫いた。

デイリー新潮編集部

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