岩森稔死刑囚の病死で、拘置所に残る確定死刑囚は107人も なかなか執行されないワケ

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 法務省は12月12日、強盗殺人罪などで死刑が確定した岩森稔死刑囚(76)が東京拘置所で病死したと発表した。死因は心不全だった。担当記者が言う。

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「岩森死刑囚は2007年3月19日、強盗殺人の容疑で埼玉県警に逮捕されました。運送会社の営業所長として狭山市で勤務する傍ら、自らも従業員を雇用して運送業を営んでいました。温厚な人柄で近隣住民からも『いい人』と評判だったほか、子煩悩な父親としても有名でした。ところが、従業員が交通事故を起こして人生が一変したのです」

 従業員は保険に入っていなかったため、岩森死刑囚が多額の賠償責務を負うことになった。更に運送会社も倒産してしまい、資金繰りが悪化した(註1)。

「近所の住民に金の無心を繰り返すようになったようです。06年末には妻子が家出してしまい、車で寝泊まりする日々が続きました。逮捕を報じた読売新聞の記事には、岩森死刑囚が住んでいた家の駐車スペースに『逃げてんじゃねえ』、『サッサト給料払え』などの落書きが残っていたとの記述があります」(同・記者)

 岩森死刑囚は07年2月21日、埼玉県本庄市に住む当時69歳の知人の男性と67歳の妻を鈍器で殴って殺害。現金1万円を奪って逃走した。

「夫妻に3万円ほど借金をしていたという報道もありました(註2)。新たに借金を頼んだところ拒否されたので夫を殺害。妻を針金で縛って金銭を要求したが、同じように拒否されたので妻も殺害したことが、埼玉県警の調べで分かっています」(同・記者)

SNSでは疑問の声

 岩森死刑囚は事件の6日前に本庄市の住宅から財布を盗んだとして、3月5日に逮捕されていた。その間の調べで殺害事件についても追求したところ、容疑を認めたという。

「2008年、さいたま地裁で一審が開かれました。論告求刑で岩森死刑囚は『ご遺族に心からおわびしたい。極刑をもって償いたいと思います。よろしくお願いします』と謝罪しました。しかし一審判決では『強盗殺人が計画的だったとは言えない』として、無期懲役が言い渡されました」(同・記者)

 2009年3月、東京高裁の控訴審では「悪質で計画的な犯行だ」として死刑判決が下された。2012年3月には最高裁が岩森死刑囚の上告を棄却し、死刑判決が確定した。

 だが死刑が執行されることはなく、岩森死刑囚は病死した。この発表に、世論の反応はかなり厳しい。特にネット上では「なぜ死刑を執行しなかったのか」という疑問の声が多い。Twitterから一部をご紹介しよう。

《被害者は無残にも殺されたのに、加害者は国費で寿命まで生きていられたのか》

《死刑判決の意味がない。遺族は浮かばれない》

《法務省は粛々と死刑執行を行い、死刑囚の刑を執行してください》

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